“一技の長”を探る システム構築ビジネス争奪戦

<“一技の長”を探る>60.富士総合研究所

2004/07/05 16:18

週刊BCN 2004年07月05日vol.1046掲載

 大手企業へのERP(統合基幹業務システム)導入が一段落するなかで、連結子会社の基幹システム刷新需要が高まっている。連結決算のスピード化、四半期開示への対応などのためには、連結子会社のシステムの刷新は欠かせない。富士総合研究所(安念満社長)は、連結子会社へのERP納入を進めると同時に、シェアードサービスという切り口で、もう1歩踏み込んだコスト削減を顧客に提案している。

シェアードサービスの提案強化

 シェアードサービスとは、財務会計や人事給与などをシェアードサービスセンターと呼ぶ専門組織に集中させることで作業効率を高め、間接業務にかかるコストを削減する方式。情報システム子会社を置いて作業を効率化する手法と似ている。「間接業務のシェアードサービス化の流れは、今後ますます加速する」(高橋二郎・システム営業本部システム営業部調査役)と、大きなトレンドになりつつあると話す。

 シェアードサービスを効率よく実現するには、親会社と同じERPを子会社にも導入することが理想だ。だが、子会社は親会社ほど規模が大きくないため、親会社と同等の大規模ERPを導入するメリットがあまりない。そこで、親会社と同規模のERPを子会社に入れる代わりに、子会社のERPをコストパフォーマンスの高いERPで“統一”することで業務の標準化を図るのがシェアードサービスへの移行促進の狙いだ。富士総合研究所では、今年3月から中堅企業向けの納入で実績があるエス・エス・ジェイの「スーパーストリーム」を子会社向けのERPの有力候補として位置づけた。

 一方で、顧客のシェアードサービス化が進むと、これまで富士総合研究所が請け負っていた給与計算などアウトソーシングの契約が打ち切られる可能性もある。これについて高橋調査役は、「シェアードサービスへの移行は市場の潮流。しかし、間接業務の効率化と標準化を突き詰め、“これ以上効果がでない”ということになれば、次は再びシェアした間接業務をアウトソーシングすることでさらにコストダウンを追求することも考えられる」と、市場動向を予測する。

 将来的に継続してアウトソーシング事業を拡大するためには、シェアードサービスの段階から提案に食い込む必要がある。こうした中長期的なビジョンに基づいた提案が、顧客からの高い評価に結びついており、商談は活発化しているという。(安藤章司)
  • 1