テイクオフe-Japan戦略II IT実感社会への道標

<テイクオフe-Japan戦略II>47.e-Japan重点計画-2004(下)

2004/07/05 16:18

週刊BCN 2004年07月05日vol.1046掲載

 「ITの利活用」を前面に打ち出したe-Japan戦略Ⅱでポイントになるのが、医、食などの先導的7分野だ。e-Japan重点計画-2004ではこの先導的7分野にも成果目標が導入され、目標実現に向けた具体的施策も重点計画-2003から一段と進化してきた。(ジャーナリスト 千葉利宏)

7分野に成果目標導入

●医

 成果目標によって電子カルテ導入の狙いが、ネットワーク転送などで患者の医療情報を医療・保健機関の間で連携活用できる仕組みづくりであることが明確になった。新規施策として、電子カルテの連携活用を行う医療機関に対する支援が追加されたほか、処方箋、診断書、出生証明書などの診療情報の電子化にも取り組む。さらに第3者機関による医療機関の情報開示も2004年度末までに2000機関で機能評価を実施する目標が掲げられた。

●食

 基本的に重点計画-2003で打ち出した施策の継続が中心だが、生鮮食品流通における無線ICタグを活用した物流管理システムの開発が追加された。

●生活

 情報家電などによって住宅のIT化を推進していく。新規に、高齢者対策、防犯対策、省エネルギーなどに対応した先導的な住宅向け情報システムの導入実験(国土交通省)と、情報家電の普及に向けた実証実験(経済産業省)が追加されたほか、家庭に広く普及しているケービルテレビを利用した新しいアプリケーションの検討(総務省)が盛り込まれた。

●中小企業金融

 4月に経済産業省の産業構造審議会で電子債権に関する報告書がまとまったことを受けて、重点計画にも電子債権市場の活性化に向けて新法の制定も視野に入れた検討を進めることが明記された。

●知

 知的財産戦略本部が策定した戦略に基づいて、重点計画-2003の施策が大幅に見直された。とくに文部科学省が担当する施策が拡充され、インターネット大学・大学院の設置基準の改正、コンテンツ制作者の養成、放送番組の2次利用にかかる契約の促進、標準著作権契約書作成システムの構築、日本映画情報システムの開発・整備など多岐に渡る施策が追加された。

●就労・労働

 起業・事業拡大に対する支援策が拡充された。成果目標にも「起業希望者に占める実際に起業した者の割合を男女とも30%になるようにする」との数値が掲げられ、官民連携ポータルサイトで会社設立に必要な手続きが簡易に行える仕組みの構築、ITベンチャーへの資金助成(総務省)と事業化支援(経産省)などが追加された。戦略的なIT投資を支援する「IT経営応援隊」を設置して先進事例となるプロジェクト約1万件の創出をめざしていく。

●行政サービス

 3月に策定された「行政ポータルサイトの整備方針」に基づいて、電子政府の総合窓口「e-Gov」の全面リニューアルを実施する。すでに導入済みの電子入札に加えて、政府調達における電子契約の導入が新たに盛り込まれた。

◆     ◆

 霞が関はちょうど定例人事異動の季節。7月11日の参議院選挙が終われば、8月の概算要求提出に向けて重点計画をベースに具体的な施策の取りまとめ作業に入る。成果目標の実現に向けて、各府省がどのような施策を打ち出してくるかが注目される。

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