拓け、中堅・中小企業市場 事例に見るSMB戦略
<拓け、中堅・中小企業市場 事例に見るSMB戦略>第13回 文具・事務機卸のジョインテックス編(3)
2004/07/05 16:18
週刊BCN 2004年07月05日vol.1046掲載
「再構築期間9か月」が勝負を分けた
ジョインテックスは、メインフレームをオープンシステムに置き換える際、「安全性を下げてまでマイグレーションするのだから」(長谷川執行役員)と、ランニングコストを削減できることを条件に、競合する数社から見積もりと再構築計画などを提出させた。最終的には、日立製作所の提案が勝利したが、コスト削減以上にジョインテックスがこの提案で注目したのが、構築期間の短さにあったようだ。
文具関連のEC(電子商取引)サイトを運営する同業他社のアスクルなどと、同等に勝負したいと考えるジョインテックスにとって、「消費者のニーズが急速に変化する文具市場で生き残るには、素早く新戦略を展開する必要があった」(ジョインテックスの小澤岳・執行役員社長室室長兼人事部部長)と、当時を振り返る。
この構築期間短縮に貢献したのが、日立製作所の独自資産調査分析ツール「DORE」である。COBOL資産を生かし再構築する際に使うこのツールは、会計や財務、顧客管理など業務データ単位で詳細設計情報を再構築できる。過去に蓄積したプログラムを履歴順に整理する一般的な再構築ツールに比べ、変更要求や再構築を短く完了できる。
「Light-Jシステム」への再構築は、このツールなどが奏功し、約9か月間で実現。ジョインテックスの長谷川執行役員は、「日立製作所以外の提案は、再構築に1年近くかかるものばかりだった。また、COBOL資産にあった余分な資産も短期間で整理してくれた」と、予想以上のでき栄えに驚いたという。
日立製作所がジョインテックス案件を受注できたのは、旧ホストを扱っていた有利な面もあったが、それ以上にアイデアに優れていたということだろう。
日立製作所は現在、ジョインテックスの新戦略に応じて、「Light-J2システム」に次ぐマイナーチェンジ版を同社に提案している。だが、「これまでは、たまたま当社戦略に条件が合致しただけ。今後、当社が進める新戦略では、別のIT企業に構築を依頼することもあり得る」(長谷川執行役員)と話す。年商約560億円のジョインテックスは、年4兆円市場といわれる文具市場で戦う新戦略を打ち出し、最適なシステム提案を今後も受け入れる方針だ。(谷畑良胤)
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