China 2004→2008

<China 2004→2008>8.したたかなレノボの強さ

2004/06/28 16:18

週刊BCN 2004年06月28日vol.1045掲載

 前号では中国IT系企業のランキング上位を紹介した。中国IT産業を理解する前提として、これから数回にわたり、主要プレーヤーを取り上げてゆく。(坂口正憲(ジャーナリスト))

 最初はIT系企業トップに君臨する聯想(レノボ)である。レノボは中国でトップシェアを持ち、売上高5200億円のパソコンメーカー。2003年4月までブランド名「レジェンド」で事業を展開してきたが、海外展開に備え、商標が既に海外で登録されていたレジェンドからレノボへブランド(グループ)名を変更した。

 グループ全体では、パソコンを中心とする情報機器の製造販売が6割、他社製品の流通販売が3割、システムインテグレーションなどのITサービスが1割という売上高構成だ(ITサービスは子会社の神州数碼〈デジタルチャイナ〉が手掛ける)。日本でも米国でも有力なパソコンメーカーは、大型コンピュータや家電製品などコアとなる事業からパソコン事業を派生させているが、レノボは初期からパソコン事業がコアである。その意味では米デルに近い。

 レノボは84年、中国科学院計算技術研究所から10人ほどのスタッフが独立、興したものだ。80年代後半は主に米ヒューレット・パッカード(HP)や東芝の販売代理業を営み、90年からは自社ブランド製品の製造販売に乗り出した。しかし当時、開放政策で中国になだれ込んできた米国製品が市場を席巻、レノボは存在感を示せないでいた。そこで64年生まれの若き現CEO、楊元慶は徹底した低価格戦略を打ち出した。その結果、98年以降、トップシェアを維持している。03年のシェアは25%である。

 中国には政府が後押しする長城計算機という国策パソコンメーカーが古くから存在する。さらに、IBMなどの海外勢がひしめく。そこでレノボが強さを維持しているのはなぜか。まず、初期段階でHPや東芝の代理店業を営むことで、流通網やサービス網を整備できたことが大きな武器になっている。加えて、97年に結んだ日立製作所との包括提携が大きな財産となった。「両社の提携で日立が得るものは少なかったが、レノボは技術的にかなりのものを身に付けたはず」(業界関係者)。レノボはしたたかに競合からノウハウを盗み取ってきたのだ。
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