大遊泳時代
<大遊泳時代>第24回 ネット直販と清く正しく美しく
2004/06/21 16:18
週刊BCN 2004年06月21日vol.1044掲載
松下電器産業 役員
先日、宝塚歌劇90周年記念式典に呼ばれ、往年のスターをお見かけし、男児ながらヅカファンで姉と一緒に通った子供時代を思い出し、「清く正しく美しく」を継承してきた宝塚に敬服した。昔、営業社員の頃、上司の営業部長が「松下営業の基本は、清く正しく美しく」だと言っていた事を思い出した。最初、上司のいわんとする所が理解できず困ったが、地べたを這って回るうちに、「横流しするな、値引きするな、誹謗するな」ということが身体でわかってきた。昭和40年代、二重価格問題が吹き荒れた時、3つの論点「正価と売価の乖離」、「系列と量販の違い」、「メーカー出荷と輸出FOBの差」がマスコミ、主婦連、通商当局に理解されず、複雑骨折し混乱したが、黙々と「清く正しく美しく」を合言葉に売って歩いていたそんな折、迎合したり、横道にそれたメーカーは、今市場から消えていってしまったことを思えば感慨深いものがある。そして今、ネット直販の時代、最大公約数的な商品企画や価格政策は通用しない。100人中、2-3人のニッチでも当たればいける。ベンチャーも流通のバリアを突破できる。ブロードバンド(BB)化とウェブ技術の進歩で商品もリアルに見えるし、サイト側も安心と信用に真剣だし、日本でもネット利用者の45%が何らかの形でオンライン買物をしている。
となるとネット営業の「清く正しく美しく」はどうなるのか。パソコンの価格の表示ミスで大損とか、CDの輸出版の逆輸入とか、ボーダーレス商品の為替値差の扱いは、中古品は、個人情報管理は、商道徳はどうなるのか。しかし戦後50年間、何事にも真剣に真摯に取り組んできたメーカー流通は生き残っている。ネット時代も同じだろう。ねえ、ワトソン君!、「企業自体は永遠不滅にいくために清く正しく美しくだけど、1人ひとりがずっと守っていくのは息切れするね!」。彼いわく「だから宝塚には卒業が、企業には定年、転勤があるじゃないですか!」。
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