WORLD TREND WATCH

<WORLD TREND WATCH>第207回 IBMチャネル戦略

2004/06/21 16:04

週刊BCN 2004年06月21日vol.1044掲載

 世界的に2000年中盤からのIT不況は回復軌道に乗ったが、大企業はITインフラ投資には消極的となり、ここでのIT市場の高い伸びは期待しにくくなった。  このため、日本とともに有力ベンダーは中堅・中小企業(SMB)市場開拓力強化のため、チャネルパートナーの拡充に向けて積極的に活動している。ベンダーのなかでは特にIBMがチャネル強化策を次々と打ち出している。

SMBビジネス完成期近づく

 IBMはSMB対象の中小規模ソリューションプロバイダ(SP)と、エンタープライズ相手の大規模SP双方の強化に乗り出していた。

 まずIBMは、SMB相手のSPに対しては「スモール&ミディアム・ビジネス・アドバンテージ・イニシアティブ」を発表し、04年当プログラムでSPの教育、インセンティブなどに5億ドル(550億円)を投じると説明した。

 IBMの感触によると、同社「オンデマンドコンセプト」にはエンタープライズより高い割合で、多くのSMB経営者が強い興味を示している。エンタープライズは大規模既存ITインフラが要因で、短期にオンデマンドへの切り換えも難しいからだ。米SMB経営が関心を寄せるのは、IBMサム・パルミザーノCEOの次のようなSMBにおけるオンデマンドの役割についての発言だ。

「オンデマンドはSMBのビジネス伸長の最適なソリューションだ。多くのSMBモデルは、企業成長を担保できるまでに敏捷になっていない。このため当社がこのコンセプトを発表すると、世界中でSMBがオンデマンドモデルを追求し始めた。これはSMBがビジネス改革期に入った証といえる」

 多くのIBMチャネルは「オンデマンドの具体的ツールであるIBMのExpressミドルウェアを基盤とする柔軟なITインフラが、SMBの抱える多くの課題を一挙に解決できる特効薬の役目を果たす」と期待している。

 また大規模SP向けにIBMは、これまでパソコン、サーバーなどセグメント別のSP向けプログラムを05年から1プログラムに統合して、SPがIBMの全商品セグメントに精通し、統合的ソリューションを提供できるようにする計画を公表した。

 これまでSPは、IBMのセグメント別チャネル条件を満たし、それぞれでチャネル契約を結ばなければならなかった。さらにIBMサポート体制もセグメント別に分かれ、IBM担当者も複雑多岐になって、チャネル側のIBM対応も極めて煩雑でコストも高くついた。このようなSP側の不満を解消するのも新しい統一プログラムのIBMの狙いだ。

 例えばSPが新たにIBMラショナルソフト製品を使う必要が出た時は、この取り扱い契約をしていなければ新規契約を締結する必要があり、要員教育コストもかさみ、さらにタイミングを失うリスクも高かった。それでも米SPはIBMと競合することがないため、同社を最もパートナーフレンドリーと評価していた。IBMチャネル戦略担当マイク・ボーマン副社長は、「IBMチャネル戦略はいよいよ完成期に近づいている」と自信を語っている。(中野英嗣●文)

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