大遊泳時代

<大遊泳時代>第22回 2007年問題と“段階”の世代

2004/06/07 16:18

週刊BCN 2004年06月07日vol.1042掲載

松下電器産業役員

 リストラ早期退職の多い職場では、規律やしきたりの継承と指導が不十分で、何かとギスギスするらしい。そんな折、2007年問題が有賀貞一・CSK取締役より指摘され、旬の話題となっている。これは、団塊の世代が07年頃どっと定年となり、ベテラン不足が深刻になり、そこへもってきて、昨今パソコン時代で、汎用大型機教育の不足も重なり、基幹系システムの運用維持も怪しくなるということ。一方では欧米と比べSCM導入でも、ベテランはPCサーバーについていけず、基幹系システムと従来からの仕事プロセスにこだわり、IT化遅れの一因を作ったと聞く。

 これらには、匠の技術の伝承の観点から2つの問題が潜んでいる。伊勢神宮の社殿は、1300年前より20年に1度、すべての社殿や神宝・装束に至るまで造りかえる式年遷宮の祭りがある。今も続けられているが、これはDB化できない宮大工の技や知恵をOJTで次世代に引き継ぐためである。奈良の室生寺の五重塔は、98年台風7号で巨木の倒壊を受けて損傷したが、その修復では過去の記録が役立ち、また解体のプロセスで古の匠の技が次々と現れ、現場確認できたからとのこと。即ち、技術のドキュメントと現物がいかに大切かを物語っている。

 戦艦大和でも、東大寺でも、いやプラズマでも、ロボットでも同じこと。もの造りで勝つには、暗黙知を形式知とし、そして組織知にまで持ち上げるナレッジマネジメント、次代の人材をOJTで育成していく仕組みと指導者が大切なことは、いつの世も変わりない。2000年問題とは違う2007年問題であるが、IT情報革命に全てを託しすぎるのは、行き過ぎではないだろうか。老壮青・男女が活き活きと働く世の中にしたい。「それはそうと、ワトソン君も団塊の世代ではなかったかね?」。「そうですよ。良くも悪くもアナログとデジタルの“段階”の世代で、喜びも苦しみも目一杯していますよ!」
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