テイクオフe-Japan戦略II IT実感社会への道標

<テイクオフe-Japan戦略II>43.電子入札システム自治体連携会議

2004/06/07 16:18

週刊BCN 2004年06月07日vol.1042掲載

 電子入札システム導入の先駆的な役割を担ってきた横須賀市(神奈川県)で、先月13日、電子入札システム自治体連携会議が開催された。会議には、横須賀方式を採用した下関市(山口県)、福井市(福井県)のほか、異なるタイプのシステムを導入した川崎市(神奈川県)、つくば市(茨城県)も含めて10市が参加。実際に電子入札システムを使って業務を行っている実務者レベルで、活発な情報交換が行われた。より良い住民サービスの実現に向けて、こうした自治体間での連携が今後ますます重要になりそうだ。(ジャーナリスト 千葉利宏)

川崎など10市の事例を紹介

 電子自治体では、これまで情報システム開発ばかりに目が向きがちだった。電子入札システムも、国土交通省が外郭団体、日本建設情報総合センター(JACIC)を通じて開発した「電子入札コアシステム」を導入するのか、独自のシステムを構築するのかという問題が中心で、実際にシステムを導入して各自治体がどのように業務改革につなげるかという問題への関心は薄かった。

 今回の会議には、横須賀市がNTTコミュニケーションズと共同開発した認証・公証システムを共用する形で電子入札システムを導入(予定)している下関市、福井市、松阪市(三重県)、佐世保市(長崎県)、長崎市(同)、宇都宮市(栃木県)の6市のほかに、JACICの電子入札コアシステムを導入して昨年10月から電子入札制度をスタートした川崎市、NTT東日本と共同で独自システムを開発したつくば市、郵便応募型一般競争入札から電子入札システムへの移行を検討中の明石市(兵庫県)が参加した。

 注目を集めたのは川崎市。コアシステムを開発したNECに、川崎市全体の電子市役所システムの開発を委託した経緯から電子入札もコアシステムを導入し、順調に稼動をスタートした。川崎市独自の工夫も行っており、通常のコアシステムではサポートしていない電子くじ機能で入札金額が同額になった場合の業者選定を行うほか、予定価格を下回る応札者がいなかった場合の再入札は翌日に実施する運用方法を採用した。

 同じ横須賀方式を導入した自治体の間でも運用方法が細かい部分で異なってきている。各自治体とも電子入札システムを効率的に活用するため、建設工事、水道工事、物品調達、業務委託などさまざまな入札業務への適用を進めており、入札参加希望業者の管理方法や電子入札システムの安定稼動対策など独自の工夫を行っている。さらに電子入札システムに障害が発生した場合、業務への影響が大きいため緊急対応マニュアルの整備も進められており、こうした運用面でのノウハウを共有化するメリットは大きい。

 電子認証への対応にも違いが出ている。横須賀方式は、同じ認証システムを利用しており、暗号キーなどの媒体はフロッピーディスク(FD)を利用。独自システムのつくば市では、NTT東日本の関連会社に認証・公証システムを設置し、つくば市の負担で認証用FDを業者に配布する方式とした。コアシステムを導入した川崎市でも、コアシステムに対応した帝国データバンクなどの認証システムも利用できるが、中小・零細業者向けに費用負担が軽い独自のICカードを発行した。

 横須賀市の電子入札システムは、先月ギリシャ・アテネで開催された世界情報サービス産業機構(WITSA)の「IT賞」を日本の公共部門のシステムとして初めて受賞するなど評価は高い。横須賀市のような先進的なユーザー部門が連携して、相互にレベルアップを図っていくことが、より良い電子自治体システムを実現するためのカギを握っているのではないだろうか。

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