China 2004→2008
<China 2004→2008>5.危うさと熱狂のはざまで
2004/06/07 16:18
週刊BCN 2004年06月07日vol.1042掲載
筆者もそれを如実に感じている。身近なところでは、例えば、この1か月でもともと高かった上海の住宅価格の相場がさらに1割ほど上昇している。上海に住む筆者の知人は、3年前に20万元(1元=13円、約260万円)で購入した郊外の中古マンションを、この4月に50万元で売りに出し、買い手と契約したが、物件を明け渡す5月、その中古マンションの相場は5万元アップの55万元に跳ね上がっていたという。 「売り時を間違えた」とその知人はとても悔しがる。何しろ値上がりした5万元は、都市部中流家庭の平均年収以上である。
上海のような中国都市部の住宅価格は、一般の市民が得られる収入機会とのバランスからいって異常である。バブル経済を経験した日本人の眼には、“危うさ”が色濃く映る。マクロから見た中国経済の問題は、連載の中で述べていかざるを得ないだろう。ただ今のところ、中国が世界中から輸入する素材は、次から次へと新築の建物や道路に生まれ変わっているのも事実なのである。その経済発展のなかで、中国のIT産業も急速に力をつけている。
中国のシリコンバレー「北京・中関村」に進出するIT関連企業で、株式を公開する企業は60社を超えている。オンラインゲーム最大手、盛大網絡のように米ナスダックにも上場し、米株式市場で資金を調達する企業も現れている。中国政府は「第10期5か年計画(2001-05年)」によって、社会のIT化とIT産業育成を最重要政策の1つとしているが、その成果が現れつつある。“危うさ”と“熱狂”が入り交じった経済状況のなかで中国のIT産業は、どのように成長しているのか。本当に国際競争力と呼べるものを身に付けているのか。次回からは中国のIT産業の現状を詳しく見ていこう。
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