テイクオフe-Japan戦略II IT実感社会への道標

<テイクオフe-Japan戦略II>42.地域情報化戦略

2004/05/31 16:18

週刊BCN 2004年05月31日vol.1041掲載

 e-Japan戦略IIの評価専門調査会が設置された昨年12月、総務省では「地域における情報化の推進に関する検討会(地域情報化検討会)」を設置、新たな戦略を立案する作業をスタートした。今年4月に公表した中間報告では、地域情報化の進展を妨げている問題点として「ユビキタスネットワークの構築」が途上であること、「住民アクセスの向上を含めたアプリケーションの展開」が進んでいないこと、「地域情報化の推進体制」が人材面などで脆弱であること──を指摘。今後は12月をメドに公表予定の最終報告に向けて具体的な解決策を取りまとめていく予定だ。(ジャーナリスト 千葉利宏)

3つの問題点を指摘

 総務省は、地域のIT化を推進するために2つの検討会を立ち上げた。1つは当連載でもすでに紹介した自治行政局自治政策課が4月に立ち上げた「電子自治体のシステム構築のあり方に関する検討会(電子自治体システム構築検討会)」。もう1つが情報通信政策局の地域通信振興課地方情報化推進室を事務局とする「地域情報化検討会」で、前者がシステム構築に特化していくのに対し、後者はネットワーク構築などのインフラ整備を含めて検討を進めているところだ。

 「これまで900億円の補助金を投入して公共ネットワークなどの全国整備を推進してきたが、今後のウェブサービス化、オープン化の流れに対応していくうえでの隘路も見えてきた」(岡村信悟・地方情報化推進室課長補佐)。地方自治体では“情報ハイウェイ”などの名称で地域のネットワーク整備を進めてきたが、自治体によって取り組みにばらつきがあり、市町村レベルではまだ途上の段階。地方自治体の間を結び、霞が関WANと接続されたLGWANも構築され、今年3月までには全ての自治体が参加したが、ブロードバンド連携はまだ実現していない状況である。

 例えば、定点設置したウェブカメラで撮影した自然災害などの映像情報をリアルタイムで見る場合、ブロードバンド接続されている地元自治体では見ることができても、ブロードバンド連携していない国の防災担当や他の自治体関係者がリアルタイムで映像を見ることができない問題点も指摘されている。公共ネットワーク構築もどのようなアプリケーションで利用するのかを意識していく必要があり、今後の多様なアプリケーション展開を予想すれば「ユビキタスネットワーク」の実現は不可欠だ。

 地域情報化検討会では、福岡県の事例を題材にして地方自治体のシステム構築のあり方も検討していく。「地域においては地方自治体の果たす役割は大きい。電子自治体システム構築検討会が直近のシステムをターゲットにしているのに対して、地域情報化検討会では次世代の電子自治体システムの仕組みをつくりたい」(岡村課長補佐)という。今後のユビキタスネットワークの構築に合わせて、その上に住民が利用しやすい公共アプリケーションを実現するためには中核となる地方自治体の情報システムも見直していく必要が出てくるからだ。

 今後、地域情報化検討会ではサン・マイクロシステムズの共通プラットフォーム「J2EE」を採用した福岡県を参考事例に検討を進めていくことにしているが、一方で電子自治体システム構築検討会はマイクロソフトの「.NET」を採用している北海道のHARP構想をモデル事業として推進していくことにしている。業界内には「総務省内部でバランスを取ったのではないか?」との見方もあるが、いずれにしても先進的な電子自治体システムとして評価が高い福岡県と北海道のシステムへの注目が一段と高まっていくことになりそうだ。

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