WORLD TREND WATCH

<WORLD TREND WATCH>第203回 ユーザー最大の関心

2004/05/24 16:04

週刊BCN 2004年05月24日vol.1040掲載

 マイクロソフトとサン・マイクロシステムズの包括的技術提携には、米国のGE、シティバンクという巨大顧客も強い関心を示す。この提携発表後、多くの米企業CIOがマイクロソフトのスティーブ・バルマーCEO、サンのスコット・マクネリーCEOを訪問してその真意を確かめたと、ニューヨークタイムズ紙は報じた。その1人、CEのギャリー・ライナーCIOは語る。「わが社のように多額のIT予算を投入する企業もIT投資抑制の波を受けている。このため、これまで多数のソフトベンダー(ISV)からソフト製品を購入していたが、予算削減でその数も減らさなければならない。この状況を両社CEOに伝えたうえ、自分は両社間のインターオペラビリティ(相互運用性)と、効率的統合環境出現を望むと伝えた」ライナーCIOに限らず、どのIT部門もソフトベンダー間の互換性欠如が最大の問題となっている。

MS、サン提携での互換性

 ゼネラルモーターズ(GM)のトニー・スコットCIOも語る。「社内に多数存在する部門別の異なるシステムを1つに統合しようとすると、少なくとも一方のシステムはすべて廃棄するという巨額の無駄を繰り返してきた。従って強力なソフトベンダーがより強くなって、われわれ顧客の言うことに耳を傾けなくなることを恐れる。マイクロソフトがサンとの提携でより強くなっても、こんな方向に行かないことをバルマーCEOへ要請した」

 米国の多くの大企業はウェブサービス構築を次の大きな目標としている。しかし、ほとんどの企業はウィンドウズとJava両方のユーザーであり、このヘテロジニアス(異機種混在)環境の上にウェブサービスを考えている。そのため異なるベンダー間のインターオペラビリティ確保は、より強い願望となった。特に.NETとJ2EE(Java2エンタープライズエディション)のスムーズな連携をユーザーは強く望んでいる。シティグループのトーマス・サンゾーンCIOは次のようにいう。

 「わが社は、.NETとJavaの連携を求めて、必要な都度独自コードを開発している。本来はマイクロソフトとサンが行うべきなのに、両社ともこれまで相互の互換性に関しては1ドルの投資も行っていない。その巨額なツケをユーザーが支払い、その無駄が巨額であることをISV首脳は十分認識すべきだ」。サンゾーンCIOは、「非互換性の問題はウェブサービスに限らず、これから主流となるグリッドコンピューティングやRFID(無線ID)など頻発し、少ないIT予算の前向きな投資がさらに厳しくなる」と不満を語る。

 またGMのようなグローバル企業は、国別の無線規格などが異なり、国別に開発が必要なことにも懸念を示す。いずれにせよ、マイクロソフトとサンの提携はユーザーが最も大きな関心を持つウェブサービス技術基盤の連携という問題に直面する。メリルリンチのアナリスト、スティーブ・ミルノビッチ氏はいう。「マイクロソフトとサンの提携で大企業IT部門はどこも、両社ともに過去のソフト業界の失敗から学んで、業界自身が成長するかどうかの試金石と見ていることを肝に命じてほしい」(中野英嗣●文)

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