テイクオフe-Japan戦略II IT実感社会への道標
<テイクオフe-Japan戦略II>40.電子自治体システム構築
2004/05/17 16:18
検討会で課題に取り組む
「検討会が一般公開で行われるのは画期的なこと。電子自治体の実現に向けて総務省が何を考えているのか、これまで十分に情報が伝わってこなかった面もあるが、今後は自治体との情報共有も進むだろう」──検討会の委員になった福岡県の溝江言彦・情報企画監は、今回の検討会の意義をそう評価する。第1回の検討会には、メディア関係のほかにITベンダーの担当者も数多く傍聴に訪れた。討議資料も全て配布したほか、インターネットでも公開。自治体関係者や実際のシステム構築を担うITベンダーとも情報共有を進めようとの狙いが見える。総務省では、2001年度から自治体での電子申請・届出システムを構築する「電子自治体推進パイロット事業」を開始。02年度からは標準的なシステムを各自治体が分担して開発、都道府県に1、2か所のデータセンターを設置して運営を地元IT企業にアウトソーシングすることをめざした「共同アウトソーシング事業」を推進してきた。
これら2つの事業は、電子自治体を実現するための基盤システムを新たに開発するのがメインで、現在稼動している既存のレガシーシステムと連携する機能や、自治体にとって負担が重い国の委託業務を効率的に処理する機能は含まれていなかった。検討会では、新たに2つの機能を加えて電子自治体がめざす全体像を改めて整理したうえで、システム構築のための基盤整備に取り組んでいく。
福岡県の溝江情報企画監も、最も注目しているのがPMO(プロジェクトマネジメントオフィス)を設置する構想だ。検討会の一般公開に加えて、PMOの設置によって幅広い情報共有化によって最適なシステム構築の実現が期待される。これまでの共同アウトソーシング事業では、システム開発を担当することになった自治体と総務省の間で情報がやり取りされ、他の自治体などからは「実際に何が行われているのか、良く分からない」との指摘も聞かれていた。すでに各自治体でもシステム構築は取り組んでおり、どの自治体でどんなシステムの開発を進めているのか、企画・開発段階から情報共有しなければ、重複投資の無駄を避けることは難しい。
PMOについて検討会の場で中央青山監査法人の松尾明氏が基本的な考え方を説明、具体化に向けて中心的な役割を果たすものとみられる。現在の構想では、全体を統括するPMOを財団法人地方自治情報センター(LASDEC)に設置し、全体最適のための企画を策定し、知識情報の蓄積を進める。さらに県グループPMOも設置、県単位での全体最適の企画を策定、個別プロジェクトに対するコーチングとモニタリングを担う。
新たに検討される国と地方との業務連携については、国と地方とのやり取りを含めた業務の手順(ワークフロー)をパターン化して自動化する「連携ワークフローシステム」と、国と地方の情報交換を円滑に進める「連携文書管理システム」の2つの開発を進める。これを実現するためXMLの標準化や文字コードの統一化を進め、北海道が取り組んでいる「北海道電子自治体プラットフォーム(HARP)構想」を実証の場として実現をめざす計画だ。
レガシー連携では、レガシーシステムを一気に再構築することが費用や時間の面で不可能なことから、システムを1つのモジュールとして扱って統合連携できるような基盤の開発を進める。第2回の検討会は7月に開催される予定だ。それまでにすでに担当が決まっている北海道に加え、今年度の共同アウトソーシング事業で予定されている財務会計、人事給与などバックオフィス系標準システムの開発と、レガシー連携のための統合連携システムの開発を担当する自治体を決めることにしている。
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