情報化新時代 変わる地域社会
<情報化新時代 変わる地域社会>第2回 山梨県南アルプス市(下) 技術革新や自治体IT化で見直しも
2004/05/17 20:43
週刊BCN 2004年05月17日vol.1039掲載
「統合すれば終わり、ではない」 次のステップへの移行も課題
■一部職員の間に不満も2003年4月1日に6町村が合併して発足した南アルプス市でも、合併から1年を経ても、新システムに対して一部職員の間で不満もくすぶっているようだ。
情報システム統合を中心になって進めた、新津岳・南アルプス市企画部情報政策課情報化推進担当は、「各町村ともコンピュータの活用はそれぞれ進めてきた。長年、使い慣れた操作環境と新しいシステムの間では、どうしても隔たりが出るのは仕方ない。新システムに慣れていくしかない」と語る一方で、「職員の中には、(合併)以前のシステムの方が使い勝手が良かったという意見もある」と苦笑い。
しかし、それぞれのシステムの良い所を生かすように、取捨選択していたら合併のシステム統合は進まなかった。
02年1月に、6町村の中で旧櫛形町よりも200人だけ人口が多かった旧白根町の情報システムへ統合を決めたものの、新津氏によれば「若干のボタンの掛け違いがあった」という。各業務内容がはっきりと決まり、南アルプス市という新市がスタートするまでの間は、NECで構成するシステムを「暫定システム」と呼んでいた。この言葉のイメージから、「そのまま白根町のC/Sシステムを持ってくる、というふうに誤解されてしまった」という。
情報政策担当者の間では、当然、ハードもソフトもOSも全て入れ替えるという〝常識〟があった。それが他の人々には伝わらなかった。
合併前の旧白根町のシステムは、サーバーOSがウィンドウズNT4・0、クライアントOSにはウィンドウス95が使われていた。「そんなシステムで新市のシステムが組めるわけがない」ということが理解されなかったという。南アルプス市としてのシステムを構成するために、サーバーもクライアントも、OSをウィンドウズ2000に変更したが、「この時は、まだ組織形態も市の名前さえ決まっていなかった」。
組織や人員の配置、業務内容、運用方法が明確になっていなければ、情報システムを構築しようにも、アプリケーションをどうするかなど対応が取れない。しかし、合併期日までの時間は限られている。ある程度の〝予想される組織〟を織り込んで、システム化に取り組んだ。
こうして南アルプス市としての新しい情報システムが構築され、合併当日からトラブルもなく稼動している。しかし、新津氏によれば、「これで終わりではない」という。
■再度、システム検討プロジェクトも
南アルプス市ができて約1年。1年間で浮かび上がってくる問題もある。「当たり前だが、情報システムも現在のままで良いとは言えない。市としての見直しがあればそれへの対応も必要になってくる。もう一度、情報システムの検討プロジェクトを行うことも有り得る」(新津氏)という考えだ。
現在の情報システムのリース期間は36か月。「さらに2年間、リースを延長するとしても最長で5年。その間に技術革新も出てくるし、何より自治体IT化など運用形態の変化にも対応しなければならなくなる」(同)。
合併を控えての情報システム統合では、住民票の発行や税など通常の業務が、南アルプス市のスタートと同時に滞りなく動くことが最優先。統合を進めている間は、「e-Japanや電子市役所構築などは論外」(同)だった。しかし、これからは次のステップとして電子市役所の構築も情報化政策には重要になってくる。その一環として、4月21日から電子申請の受付もスタートしている。
新津氏が語る以上に、合併を控えたシステム統合は困難を伴うようだ。6町村の人口で決めたことについても、新津氏自身を含めて、「旧白根町以外の各町村の担当者は、それぞれの役場に戻って肩身の狭い思いをしたようだ」とも。それが、合併後に各町村職員の間で、システムの使い勝手への不満につながる。
しかし、情報システムの見直しが進められることで、そうした不満も少しずつ解消されてくるだろう。「南アルプス市の情報システムは、統合したことで終わりではない」と新津氏が語る言葉は、他の合併市町村にもそのまま当てはまるだろう。
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