“一技の長”を探る システム構築ビジネス争奪戦

<“一技の長”を探る>52.ガルフネット

2004/05/03 16:18

週刊BCN 2004年05月03日vol.1038掲載

 ガルフネット(石川純一社長)は、流通サービス業に特化したシステムインテグレータである。これまで約90社2万店舗に受発注管理や勤怠管理、売上管理などのシステムを納入してきた。なかでも飲食業には実績が多く、売上高の約7割を飲食業向けのシステム構築が占める。

リスク高いがチャンスも大きい

 同社の創業は1994年。システムインテグレータとしては比較的新興の企業である。このため、すでに大手インテグレータが足場を固めている大手金融・製造業などへの参入は難しかった。そこで、当時まだIT化が進んでいなくて、競合他社が少なかった飲食業を中心とした流通サービス業に特化する方針を打ち出した。

 飲食業で最も重要な業務アプリケーションは、リアルタイムで稼働させる受発注システムである。生の食材を扱うことが多く、店舗数や展開エリアも広い傾向がある飲食業では、万が一、この受発注システムが止まると食材が届かず、営業ができなくなる恐れもある。アパレル業や物販業など、受発注システムが多少停止してもある程度店舗在庫でカバーできる業態とは「システムの重みが違う」(ガルフネットの児島信広・専務取締役)という。

 「このリスクの高さゆえに、普通のインテグレータが軽い気持ちで手を出せない領域となっていた」(同)と、インテグレータにとってハイリスクなビジネスであると指摘する。「各店舗を結ぶネットワークやデータセンターなど、絶対に停止しないという自信がないとできないビジネス」(同)とし、逆に言えば、このリスクの高さを乗り越えるガルフネットの技能とノウハウが差別化のポイントになっている。

 受発注システムなどはオリジナルで開発した。だが、財務会計や人事給与などの一般的な業務システムは他社パッケージを導入した。「会計・人事は、他に進んだベンダーがたくさんある。あえてここへ進出するより、リスクが高くても成長する可能性が高くて競合が少ない領域へ投資した方がビジネスチャンスは大きい」(同)と考えている。

 これまでモンテローザ(居酒屋チェーン白木屋など約1100店舗)をはじめとする大手企業が顧客の中心だった。これに加えて、今後は主力の受発注システムなどをASP(アプリケーションソフトの期間貸し)サービス化、「スモールガルフ」(仮称)を早ければ、今年10月までに立ち上げ、店舗数10店舗程度の中小企業顧客の取り込みにも力を入れる。(安藤章司)
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