視点

ITにも全頭検査か国産牛育成路線を

2004/04/26 16:41

週刊BCN 2004年04月26日vol.1037掲載

 アメリカに対する牛肉全頭検査要求は、とてもまともだ。ここは、日本のバーゲニングパワーを信用して、がんばる一手であろう。なにせ、石油はいざ知らず、牛肉、豚肉、大豆、鮪など日本は世界一の輸入国なのだから。GDPは、英仏伊の合計より多いし、外貨準備にせよ、中国4000億ドルの倍近い7000億ドルを相変わらず保持している。ところで、IT関係の輸入は健全であろうか?知る人は知っているが、普通の利用者にとって、米国主導のパッケージソフトウェアの普及はまことにもって不健全というほかはない。利用機能の10%以下しか使用されないお飾り機能、8000万行を超す肥満なコード、生鮮食料品なみの改版、各版3000以上を超す不具合、インターフェイス情報まで開示しない閉鎖性などで特徴づけられている代物だからである。

 日本のITに対する通念は、ペルリやマッカーサー以来の相も変わらぬトラウマ(米国追従路線)を背負っているようである。そもそも、ITについての議論は一筋縄ではいかない。似非の問題設定や弛んだ設問が多いからだ。ちょうど、「学力低下論争」や「創造力談義」に似ている。凡庸な問題設定では紋切り型の結論や思考停止にしかならないことまったく同様である。だからトラウマを引きずった議論を、どんなにやっても不毛となる。

 そこで、どんな問題設定が一番本質を突くことになるのだろうか? 1つの仮説を提示しよう。牛肉問題とのアナロジーがよいのではなかろうか。ある意味で、「肥大・品質不全ソフトウェア問題は、ITのBSE問題である」。ITで何十年もやってきた普通の技術者なら、この辺は常識なのだが、バブルが弾けて以降、素人の俗論が、ジャーナリズムも含めて、利用者や仲介者に蔓延してしまったのはまことに残念であった。

 そこで処方箋だが、あまり声高に「ソースコード公開、全数検査」を叫ぶよりも、いっそ日本が先に「スモールイズビューティフルソフト」を世界に先駆けて輸出するほうが早いのかもしれない。例えば、
・リアルタイムマルチメディアOS
・アプライアンスソフト(専用ワープロ)
・機械翻訳ソフトウェア
・ロボット用ソフト
・セキュリティソフトウェア など。元禄・享保・文化・文政の日本人ならとっくにやってしまっているのではなかろうか。
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