OVER VIEW
<OVER VIEW>緩やかな成長期に入った2003年米国IT企業決算 Chapter9
2004/04/26 16:18
週刊BCN 2004年04月26日vol.1037掲載
巨大量販好調、大手ディストリビュータも回復へ
■ベスト・バイは右肩上がり、ディストリビュータも回復へ米国のパソコンなどを主力商品とするITディストリビュータでは、3位シネックス以下を大きく引き離すイングラム・マイクロ、テック・データの2社が飛び抜けて強い。両2社の売上高合計は、2003年も400億ドル(4兆4000億円)を越えるので、両2社決算を通じて、米国における流通状況をある程度把握することができる。イングラムもテックも00年からのIT不況で売上高が2年にわたって落ち込んだが、03年にはようやくプラスに転じた。
米国でのパソコンシェアでは、デルとノンブランドのホワイトボックスで60%近いので、ディストリビュータを通す流通量が減っている。特にデルの米市場での独り勝ちは、デル商品がダイレクトモデルでディストリビュータにとっては強い逆風となっている。IT不況とデルシェアの上昇によって、米国ディストリビュータは苦戦を強いられてきた。しかし、03年後半より流通に依存するヒューレット・パッカード(HP)やIBM出荷台数が増えたこともあって、イングラムとテックの売上高も03年に回復し始めた。
これに対し、米国最大の家電、IT量販店のベスト・バイは、90年代後半から売上高は右肩上がりの状況を続けている(Figure49)。
ベスト・バイ売上高は、98年の100億6500万ドルから03年には2.5倍の245億4700万ドルとなった。この間の売上高年平均伸長率は19.5%ときわめて高い。これに対し、米国IT投資ピークの00年比で、03年イングラム売上高は26.4%減、テックも14.8%減である。
■低い総利益率に苦しむディストリビュータ
イングラムとテック売上高は03年からプラスに転じた(Figure50、51)。
03年イングラムの売上高と総利益はほぼ前年比横ばいだったが、販管費、リストラクチャリング費用の減少によって営業利益は3倍となり、最終損益も02年の赤字2億7500万ドルから1億4900万ドルの黒字に転じた。テック売上高も02年までは減少しつづけたが、03年には2ケタのプラスとなり、総利益も18%伸びた。03年テック販管費は前年比32.7%と増加したが、特別費用が3億2500万ドル減少したこともあって、営業損益も純損益も前年の赤字から黒字転換した。
しかし、ディストリビュータも総利益率が6%を切ったことから、販管費も4%台以下に維持しないと営業黒字を計上できない状況となっている。実際、両社総利益率は、イングラムが5.4%、テック5.6%で、販管費は4.6%、4.7%と「アンダー5経営」となっている。これで営業利益率1%の確保がやっとである(Figure52)。
イングラム、テックの米2社に比べると、わが国最大のディストリビュータ「ダイワボウ情報システム」の03年3月期の総利益率は8.0%と高い。しかし販管費率も7.1%と米2社より2ポイント以上高いので、営業利益率も0.9%と米2社並になっている。
同期ダイワボウ売上高は30億4100万ドル(3345億円)とイングラム、テックより1ケタ少ない。売上高が小さいことによって、販管費率は上昇する。いずれにせよ、販管費率を4%以下に長期に維持するのは極めて難しい。したがって、米2社は総利益率を上げるための戦略を展開している。1つはディストリビュータの卸売り先のSP(ソリューションプロバイダ)の大部品が手がけるホワイトボックス部品流通だ。インテルなどもホワイトボックス向けシステム商品部品の販売を積極化しているので、ディストリビュータ取扱高も増えている。一時はイングラムなども自らホワイトボックスビルダーとなったが、SPに大きな販路を拡大できず撤退した。
ホワイトボックスは、デルも試みたが、SPの興味を引くことはなかった。さらにイングラム、テックはIBMなどと提携し、ベンダーのパートナーに商品やサービスの一括卸売り戦略を展開し始めた。
■デジタルAV潮流に乗った巨大量販ベスト・バイ
米国のAV、IT量販店では、北米に757店で売上高245億ドルのベスト・バイ、100億ドル規模で625店のサーキット・シティが巨大だ。このほかにフランチャイズ店を含めて7146店のラジオ・シャックも店舗数でほかを圧倒する。ラジオ・シャックはすべて小型店で1店当たりの平均売上高は65万ドル(7100万円)だ。
米国では、ハイテクだけではなく、流通業すべてが数社の超大型へ収斂しつつある。一般消費者対象でも30兆円規模のウォルマートストアが他を圧倒している。AV・ITでウォルマートに匹敵するのは03年売上高が245億4700万ドルのベスト・バイだ(Figure53)。
ベスト・バイの売上構成はAVなどコンシューマエレクトロニクスが37%、パソコン、小型IAサーバー、ネット機器などホームオフィス関連が35%、これにゲームなどエンターテインメント・ソフトが23%とバランスがきわめて良い(Figure54)。
また、わが国家電量販のヤマダ電機などの総利益率が20%以下であるのに対し、ベスト・バイは25%前後と高いのも大きな特徴だ。ベスト・バイは常に総利益率の高い新製品売上高を伸ばすことに注力しているからだ。ベスト・バイはIT商品から徐々にホーム向けデジタルAV商品のウエイトを高めている。「ベスト・バイが常にほかの量販店を圧倒してきたのは、購買意欲を高める店舗戦術を次々と展開してきたからだ」と、同社ブラッドベリー・アンダーソンCEOはいう。
03年から同社は、「トライ&バイ」方式を採り、コンシューマが店頭でトライアルできることで、多くの客を集めている。さらに、04年にはデジタルホームの総合ソリューション販売を視野に入れた「デジタルライフルーム」のセット販売を開始した。これは、デジタルテレビ、AVサーバーやホームLANなどに構築サービスを含めて、1万8000ドル(約200万円)からの値立てがされている。
「ベスト・バイにとって最強競合は、サーキットシティなど同業他社ではなく、AV・ITに力を入れる量販最大のウォルマートだ。価格デフレは量を増やすので歓迎する」と、アンダーソンCEOはいう。
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