視点

オークションと権利侵害問題

2004/04/19 16:41

週刊BCN 2004年04月19日vol.1036掲載

 ヤフーオークションを悪用して海賊版ソフトが大量に出品されている問題について、ヤフージャパンとの合意に基づいた実務活動が、3月15日、スタートを切った。ヤフーオークションにおける海賊版ソフトは、ACCSの会員会社の多くにとって、今やファイル交換と並ぶ最大の権利侵害問題であり、最大の関心事と言っても過言ではない。この問題の対策として、ACCSはこれまで、出品者に直接メッセージを送ったり、個別にヤフー側に削除要請(出品停止要請)するなど活動してきた。また、ACCSの調査活動でも、2003年度の刑事事件全19件のうち、ヤフーオークションを悪用した著作権法違反事件は半数以上である11件に及ぶ。

 こうした活動を経て、今年1月、海賊版出品の削除についてヤフージャパンとの協力体制に合意したことは、ニュースなどを通じてご存じの方も多いだろう。具体的には、出品停止の基準などを双方合意のうえで決定し、迅速な削除対応を可能にするものである。3月15日、この実務がスタートしたのである。この日、会員会社から提供された海賊版出品情報をもとにヤフージャパンに対して削除を要請したのは約950件ある。要請を受けたヤフージャパンでは数時間のうちに次々と削除していった。この後、3月23日までの1週間で合計約2600件の削除要請を提出。すべてが削除され、23日午前には、ヤフージャパンとACCSが合意した基準の海賊版出品は一旦ゼロとなった。もちろん、一度削除されても出品を繰り返した件数も含まれているが、結果として3月末までに、延べ約3000件について削除要請を行い、実際に削除されたのである。

 ACCSは、この活動を継続的に行っていく。この活動を支える会員会社からの情報提供も日常的に受け付けており、削除要請の書式など具体的な方法については、会報126号(3月)、127号(4月)に記載しているほか文書でも提供できるので、必要であれば事務局まで連絡して欲しい。また、電子出版物、映像ソフト、教育教材などのデジタルコンテンツにも同様の対策やその法的保護活動を広げていく。ACCS会員でない会社においても、ネットワークにおける著作権侵害で頭を痛めている人々はACCSの門を叩いてもらいたい。安全で健全なネットワーク社会を目指して、今期もACCSは、確信犯とは闘っていく。
 
一般社団法人 コンピュータソフトウェア 著作権協会 専務理事 久保田 裕
久保田 裕(くぼた ゆたか)
 1956年生まれ。山口大学特命教授。文化審議会著作権分科会臨時委員、同分科会国際小委員会専門委員、特定非営利活動法人全国視覚障害者情報提供施設協会理事、(株)サーティファイ著作権検定委員会委員長、特定非営利活動法人ブロードバンドスクール協会情報モラル担当理事などを務める。主な著書に「情報モラル宣言」(ダイヤモンド社)、「人生を棒に振る スマホ・ネットトラブル」(共著、双葉社)がある。
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