OVER VIEW
<OVER VIEW>緩やかな成長期に入った2003年米国IT企業決算 Chapter7
2004/04/12 16:18
週刊BCN 2004年04月12日vol.1035掲載
IT不況から脱出したインテル決算
■売上高、利益が回復基調にあるインテル世界的なパソコン出荷台数の回復とともに、03年インテル売上高も再び2ケタの伸びとなり、長引く不況で低迷した同社業績も回復基調にある。03年のインテル売上高は前年比12.6%増の301億4100万ドル、営業利益率も売上高の25%の75億3300万ドルと、利益でもインテルは再び強力となった(Figure37)。
インテルは総利益率が50-60%ときわめて高い。03年も56.7%の総利益率となり、パソコンプロセッサ独占のため他の半導体ベンダーを利益率でも圧倒する。高い総利益率にもかかわらず、インテルの売上高比の研究開発(R&D)費率は14-15%、また販管費率もR&Dとほぼ同程度であるので、25%というきわめて高い営業利益率を確保している。
世界パソコン市場規模は2000億ドル(22兆円)程度と推定されている。この市場でOSやプロセッサを独占するウィンテル2社のパソコン関連合計売上高は550億ドルと、パソコン市場の30%近くを占めている。世界パソコン業界の利益がウィンテル両社に集中している業界構図は相変わらず変化していない。
パソコン業界で独り勝ちしているデルの総利益率が17-18%で推移していることを考え合わせると、このウィンテル両社の利益率の高いことは、業界が同一部品を使う水平分散モデルの宿命といえる。90年代後半からのITバブル期、インテル売上高年平均伸長率は14-15%と高かったが、00年後半からのIT不況はインテル決算を直撃した。01年の同社売上高は前年比で21.3%と大きく落ち込んだ。02年も前年比横ばいだったが、03年から売上高は回復し始めた(Figure38)。
インテル決算では、売上高が減少するとこれにともなって総利益率も下がる。不況でパソコンベンダーからの価格交渉の圧力が強くなるためだ。売上高が低迷した02-03年、同社総利益率は40%台へと下がっている。しかし、売上高増加とともに総利益率も再び50%台へと回復している。回復したとはいえ、03年同社売上高はピーク比で10.6%減少している。今後は世界半導体需要の中心がこれまでのパソコンからデジタル家電へ移行するので、デジタル家電におけるプレゼンス強化がインテルの次の課題である。
■デジタル家電でのシェア確保がインテルの課題
世界の半導体売上高、パソコン出荷台数そしてインテル売上高の前年比増減率はきわめて類似した軌道を描いている(Figure39)。
世界半導体売上高も、世界IT投資がピークだった00年に大きく伸びたが、その後のIT不況で大きく落ち込んでいた。当然半導体市場動向とインテル売上高の関連性は高い。03年も世界半導体ベンダー売上高ランキングで、インテルは第2位のサムスン電子以下を大きく引き離している(Figure40)。
インテル売上高シェアが14.8%であるのに対し、サムスン電子はインテルの3分の1、5.3%に過ぎない。しかし第2位サムスン以下の日韓勢ベンダー半導体はパソコン市場ではシェアがきわめて低いが、デジタル家電向け薄型ディスプレイ装置やシステムLSIでは大きなシェアをもつ。従って、半導体需要がパソコンからデジタル家電へシフトすると、市場におけるインテルプレゼンスにも大きな変化があることが想定される。
インテルも「デジタルホーム構想」を発表し、まず薄型ディスプレイ表示素子をデジタル家電市場への参入口としている。しかし、日本ベンダーが高いシェアをもつデジタル家電は、有力製品ベンダーがすべての基幹部品を自社開発する垂直統合モデルである。従ってインテルがデジタル家電部品へ参入しても、当面の顧客はデル、ヒューレット・パッカード(HP)など水平分散モデルで薄型テレビへ参入したパソコンベンダーに限定される。
インテルは「ムーアの法則」でデジタル家電へ参入すると意気込むが、これによってパソコン同様に商品ライフサイクルが短くなる「生鮮家電」への国内家電ベンダーの警戒感は強く、これもインテルの今後の大きな課題だろう。
■インテルの課題、MPU依存と64ビットでAMDの追い上げ
パソコンMPUで独走するインテルは、パソコン用MPU依存の体質が決算書からさらに明確になっている。
03年の同社売上高に占めるパソコンMPUを主力商品とするインテルアーキテクチャビジネスの比率は86.6%ときわめて高い。他のインテル事業セグメントでは、インテルコミュニケーションズ構成比が7.1%、ワイヤレスコミュニケーションズ&コンピューティングが6.2%と低く、MPU依存が現在のインテル経営である。インテルは携帯電話向けのフラッシュメモリや、ホワイトボックスビルダー向けのシステム商品OEM(相手先ブランドによる生産)も手掛けるが、大きな売上高伸長は見られない(Figure41)。
03年売上高増減でも、MPUなどは2ケタの伸びを示したが、コミュニケーションズ関連は1ケタの増加、ワイヤレス関連は2ケタの減少であった。さらに、インテルアーキテクチャにおける構成比ではMPUが83.8%、チップセット、マザーボードなどが16.2%と、MPU比重の高いことが一層はっきりする。このMPU依存が高い点とともに、インテルの64ビットMPU戦略の迷走が同社の大きな課題だ。
64ビットでインテルItaniumは32ビットと非互換の仕様IA-64を採用した。これに対しインテルと競合するAMDは64ビットOpteronでIA-32を採用し、x86との互換性を維持した。この結果、Itanium搭載サーバーの普及が進まない間に、インテル32ビットと互換のOpteronをIBM、サン・マイクロシステムズ、HPという有力サーバーベンダーすべてが採用した。AMD対抗のためインテルは32ビットXeonを64ビット機能に拡張する「拡張Xeon」を発表した(Figure42)。
拡張XeonはOpteron互換であり、これまでインテル互換を追い続けたAMDに代わって、インテルが64ビットでAMD互換戦略を採ることになった。この戦略転換をインテルがスムーズに乗り切れるかが、64ビット時代が近づくパソコン、IAサーバーでのインテルの課題となる。
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