大遊泳時代
<大遊泳時代>第15回 社史ブームとIT
2004/04/12 16:18
週刊BCN 2004年04月12日vol.1035掲載
松下電器産業役員
社史研究家で有名な村橋勝子さんによると、明治期、昭和初期、戦後生まれの企業が、それぞれ100周年、50周年、30周年を迎えた'80年代半ばに、第1次社史ブームが起きた。それから20年経ち、今年頃から第2次ブームが起こるとのこと。いよいよ景気回復で士気一新の機会。何よりもIT導入による制作効率化が可能となったことであろう。ところで日頃、枕にもならず、読まない社史であるが第1に、1つの経営戦略・組織論であり、ベンチャー論である。そして日本の産業史、技術史にもなり、国民文化史の役割も担う。社史といえども社会的責任は大きい。第2にデジタルメディアの進歩で、紙以外にもCD-ROMからDVD、インターネットで公開などと多様になったが、後世になって記述言語やOSが変わって読めないとか、ハード規格がなくなってしまったでは、後輩に申し訳ない。第3に、やはり100年後を意識し、公正中立な物語歴史となるために嫌な事、隠したいという史実も扱う心の余裕・大局観と論理構成力が必要である。ところで、大日本印刷グループがホームページでデジタル図書館「社史の杜」を実験している。ネットワーク時代に素晴らしい試みである。関西では「企業ミュージアムの協会」(亀田訓生理事長)が各企業の歴史館、博物館を切り口に企業の創業の志を研究している。
さて、結論めくが「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」の名訓を思い出すにつけ、スピード速くて情報の多い21世紀の社史編纂は、従来の総務、広報に加えて企画やIT部門、CIO(最高情報責任者)が加わるべきではないか。ところでワトソン君、「どうかね、当社ももう90年、100年だよ。どうするのかな?」。「いやー、ドッグイヤーに加えて高齢化時代で、お元気なOBが多すぎて書きにくいですね」。
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