企業のIT調達モデルを変える デルの挑戦と死角

<企業のIT調達モデルを変える デルの挑戦と死角>15.成長のカギ握るプリンタ事業

2004/04/12 20:43

週刊BCN 2004年04月12日vol.1035掲載

 前号では、米デルがパソコン事業にそれほど高い成長を期待していないことを指摘した。2006年で600億ドル企業へ成長するには、パソコン以外の事業を大きく伸ばす必要がある。デルのパソコン事業と一番親和性が高いのは、プリンタやモニタなどパソコン周辺機器だろう。デルは03年、このジャンルで自社ブランド販売、リセールを合計すると約43億ドルを稼ぎ出し、06年には130億ドルもの売り上げを目指している。このなかでも成長のカギを握るのがプリンタ事業である。500億ドル規模の全世界プリンタ市場のなかで、デルの販売金額が占める割合は1%でしかない。(坂口正憲(ジャーナリスト))

 デルは、03年3月から米レックスマークよりOEM(相手先ブランドによる生産)供給された製品を自社ブランドで販売開始。米国インクジェットプリンタ市場におけるシェアは03年第3四半期に12.8%に達し、シェア第3位につける。自社ブランドでの市場参入後、わずか半年で巨大な米国市場で一気に10%以上のシェアを獲得したわけで、さすがに強力な販売力を持つ。全世界で4300万台のプリンタを販売するトップベンダー米ヒューレット・パッカード(HP)への対抗軸となる可能性がある。しかし、デルがパソコン市場で見せるような強さをプリンタ市場で発揮できるかどうかは疑わしい面もある。

 プリンタはコモディティ(日用品)化しているが、技術・パーツは標準化されておらず、メーカー各社が独自技術を競い合う。そうなると、標準パーツをタイムリーに仕入れ、製造販売するというデルが得意とするビジネスモデルが適用できない。リセールビジネスの域を大きく超えることは難しいだろう。デルがリセラーである限り、プリンタ事業のカギを握るサプライ品でもインパクトのある価格を打ち出せない。デルへOEM供給するレックスマークが、自らの首を絞めてまでサプライ品を安くデルに供給するとは考えにくい。結局、最終的なイニシアティブはサプライヤー側が握っている。もちろん、デルのプリンタ事業は始まったばかり。今後、どのような展開を見せるかは予断を許さないが、どちらにしてもパソコン事業ほどスムーズに成長するとは思えない。
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