大遊泳時代
<大遊泳時代>第14回 ITと新日本語
2004/04/05 16:18
週刊BCN 2004年04月05日vol.1034掲載
松下電器産業役員
1月19日の日経新聞に大修館書店の「高校生の言葉の乱れ」の調査報告が載った。全国の高校の国語教師を通じてだから、ほぼ実態に近いだろう。「とても乱れている」は46%、「少し乱れている」と合わせて94%。「ヤバイ」、「キモイ」、「全然ある」、「違くない」、「へえぇ」は路上のウンチャンスワリと一緒でまだ良い方らしい。そして文藝春秋2月号で、白川静先生の「文字を奪われた日本人」の寄稿で、漢字を制限し、漢文古文をやめ、素読、暗誦を放棄したことのつけの恐ろしさが解った。ものの奥を考える、形、筆順から入って奥を究めることができない、表面だけの日本人が増えたという。ワープロ、電卓の責任も大きいが、テレビ文化の責任も逃げられない。そしてケータイが日本人の文化的衰弱を後押ししているという。そういえば携帯の会話、メール、絵文字、まさにIT語、新日本語である。カタカナ、ひらがなの誕生と同じと思えば腹も立たないかもしれないが…。最近は美しい日本語を求め、小唄、百人一首や漢字検定、書道が注目されている。また、若者はカラオケの歌詞画面で、日本文、しかも古い言葉に驚き、感激するという。ナツメロ、軍歌、寮歌、唱歌のたぐいである。
アメリカではヒューマニティーズという、ものの見方、真理を考え、人に理解させるコミュニケーション能力、プレゼンテーション能力の学問が重視されている。アメリカ大統領の就任演説と日本の総理の所信表明の違いは、ヒューマニティーズとのこと。もっと日本語を大切にしなければならない。このことはIT、ソフトウェアでは均一、画一となりすぎて解決にならない。やはり生身の頭と心が大事とのこと。「日本は一体どうなるのかね?」。ワトソン君、答えていわく、「近いうちに百人一首も源氏物語もカラオケと電子BOOKで学ぶことになりますね」。
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