テイクオフe-Japan戦略II IT実感社会への道標

<テイクオフe-Japan戦略II>35.行政手続きオンライン化

2004/04/05 16:18

週刊BCN 2004年04月05日vol.1034掲載

 「パソコンは“たらい回し”がありませんから。上手く検索すれば目的のところに行くことができます」。総務省が、3月26、27日に電子政府・電子自治体体験イベント「意外に簡単、こんなに便利!使ってみよう!電子政府の総合窓口『e─Gov(イーガブ)』」をJR東京駅八重洲中央口イベントスペースで開催した。タレントの早見優さんらとトークショーに参加した総務省大臣政務官の世耕弘成参議院議員はe─Govのメリットをアピール。電子政府・電子自治体サービスの普及に向けて啓蒙活動にも力が入ってきた。(ジャーナリスト 千葉利宏)

サービスの質向上が課題

 2001年1月のe-Japan戦略で、政府は03年度中に行政手続きのオンライン化を実現する目標を掲げ、2か月後に策定された最初のe-Japan重点計画にも「法令、白書などの行政情報を原則としてインターネット提供」と「実質的に全ての申請・届出など行政手続きをオンライン化」の2つを03年度までに実現することが明記された。

 前者の目玉となる施策が行政ポータルサイト「e-Gov」の立ち上げであり、後者も年度末になって経済産業省など各府省が相次いでオンライン化手続きの追加措置を発表。予定通りにe-Japan戦略で掲げた目標をクリアすることができた。行政手続きオンライン化は準備が整ったものから順次始まっていたが、先週からは今年1月から始まった電子納付に対応したほか、申請書を送付したあと何らかの事情で取り下げる場合の取り下げ機能、代理人による申請や連名による申請などの機能も追加されている。主要府省が公表したオンライン化の状況は次の通り。

▼経済産業省=所管法令に係る全ての行政手続き約5400手続について3月29日から24時間365日で電子申請の受付を開始。

▼総務省=3月29日に424手続を追加して所管手続きのうちほぼ全数に近い1000手続でオンライン化をスタート。4月以降も19手続を逐次オンライン化する予定。

▼厚生労働省=3月29日から労働保険関係手続き、労働安全衛生関係手続きなど967手続を追加して所管手続きのほぼ全ての1881手続きをオンライン化。

▼国土交通省=03年度末に自動車分解整備事業の認証に係る変更届など1382手続きを追加して2130手続でオンライン化を実施。当初計画通りに所管手続きの9割をカバー。

 総務省のイベントでも今年2月に名古屋国税局管内から始まった電子申告のデモなどを体験できるコーナーを設置。オンライン手続きが意外に簡単に利用できることをアピールしたが、果たして今後国民にどれくらい利用されるだろうか。昨年1年間の「e-Gov」へのアクセス件数は約648万件。イベントのトークショーでは全府省の法令文書を検索できるデータベースが好評で良く利用されている話題が紹介されたが、「1日で600万件ものアクセスがあるサイトもあるわけで、e-Govの利用はこれから」と世耕大臣政務官も言うように、知名度はまだまだ低い。行政手続きのオンライン化も、各府省がとりあえず現行の手続きをオンライン化したという段階である。

 「e-Govには、政府に対して意見や要望などを言える窓口もあるので、どんどん利用してほしい」(世耕大臣政務官)。国民にとって本当に利用しやすいサービスを実現するには、実際に利用してみて問題点や要望を政府に伝えて、それをきちんと反映させていくことが重要になる。イベント会場で配布していたパンフレットには“脱「お役所仕事」”のフレーズが書き込まれていたが、e-Govや行政手続きオンライン化で行政サービスの質そのものが向上していくのかどうかを注目していく必要がありそうだ。

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