視点

ソフト開発流出の懸念と対応策

2004/03/29 16:41

週刊BCN 2004年03月29日vol.1033掲載

 中国の経済発展は相変わらず目覚ましい。それにつれ日中貿易総額も過去最高の14兆4000億円、前年比30.4%増、特に日本からの輸出額の伸びは6兆2000億円、前年比43.6%増と伝えられる。日本経済も株価は上昇基調、個人消費・民間設備投資ともに堅調で底を脱したとの見方が多い。中国や韓国からの輸入が増すにつれ、日本からの輸出が増える。液晶用部材をはじめ最先端の電子部品、やはり最も優れていた日本の建設機械、まだ日本でしか生産できない自動車用高張力鋼鈑などのお陰である。ITバブルも弾けたと揶揄されながら、光通信関連機器事業も1兆円を超える産業となった。日本の技術者、彼らを擁し新たな道を切り開いていく日本の製造業は本当に立派だと思う。

 さて、ソフトウェアはどうだろう。日本のソフトウェア開発にインド、中国の力が多く活用されている。コストと人材問題が海外パワー選択の理由である。中国での開発コストは総合で30%程度日本より安いと言われている。
●日本には地方の小都市に在住している優れた技術者とその卵が多くいる。
●地方の小都市に住むそれらの人々に適した仕事はそこにはない。大都市にしかない。
●ソフトウェア開発プロジェクトでは60-70%の仕事は(必要なコミュニケーションがいつでもとれるなら)どこでやられても構わない。30-40%がCo-locativeモードで進められれば良い。
●日本国中、どこでも高速のインターネットを使うことができる。ソフト開発にとって最適にして必須の道具、通信手段である。

 こんな条件を考え合わせると、はるばる中国に出さなくても良いソフトウェアは沢山ある。大都市で発生するソフト開発プロジェクトを各地方に散在する技術者に紹介し、インターネットで結ばれた人たちが共同作業を行い、中規模プロジェクトを責任をもって高品質・ローコストで成し遂げる「仕組み」をつくり得る環境は十分整っている。今日、技術の世界に占めるソフトウェアの役割は大きい。安易な理由による無差別なソフトウェア開発の海外流出は、近い将来、日本が海外の諸国に貢献できる何物をももたない事態を招くことになるのである。前記した日本の誇る技術、産業を鏡とし考え続けるべきソフトウェア問題であろう。
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