大遊泳時代

<大遊泳時代>第12回 「歌なし」から「着うた」へ

2004/03/22 16:18

週刊BCN 2004年03月22日vol.1032掲載

松下電器産業 役員

 ラジオ番組「歌のない歌謡曲」、いわゆる「歌なし」は昭和26年9月1日、日本最初の民放ラジオ、大阪の新日本放送(現・毎日放送)が開局3日目から始めた。50年経過し、今は1万6000回の放送を超えており、月-金の朝15分間、全国37局で流され、500万人のリスナーを楽しませている。日本で同一スポンサー、同一ラジオ番組の最長寿記録とのこと。まさに「継続は力なり」。「歌なし」がひとつの文化となっている。

 ところでその「歌なし」はカラオケとどう違うのか。テイチクレコードのカラオケ通、宮田哲治部長に聞くと「カラオケ」は伴奏とリズムが中心であり、リードメロディはないが、素人が唄いやすいようにメロディらしきものを少し入れてある。一方「歌なし」は人が唄うためのメロディが演奏されており、しかもその音量が大きいのでカラオケとして唄えない。映画のテーマソングの歌なしが、レコードの世界での始まりらしく、軽音楽のジャンルに属するとのこと。

 ということで「歌なし」と「カラオケ」とは違うことがわかったが、そこへ携帯に「着カラ」、「着メロ」、「着うた」が登場したので頭が混乱してきた。「着カラ」は著作権料を支払い、高圧縮で高効率な音譜データのMIDI音源で、音程、テンポも自由に設定して携帯に送り、ユーザーが画面の歌詞を見ながらカラオケに利用する。

 「着メロ」も同様、MIDI音源でメロディを作り携帯に送り、着信音に使っているが、カラオケには使えない。「着うた」は少し違って、各レコード会社の歌入り生音のCD音源そのものをMPEGで圧縮して携帯に流している。MPEGの圧縮率、演奏自由度は劣るものの、最近では「着うた」が激増とのこと。いやはや「歌は技術につれ技術は歌につれ」であり、ワトソン君にかかると「いやー。世の音痴も歌なしやカラオケのおかげで何でも唄えるようになるんですね」。
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