WORLD TREND WATCH

<WORLD TREND WATCH>第195回 NTサポート終了巡る激突

2004/03/22 16:04

週刊BCN 2004年03月22日vol.1032掲載

 2004年1月開催の米国LinuxワールドExpo開催後、米国Linux市場は大きく変わりつつある。これまでLinuxは主として、ネットのフロントエッジなどこれまでとは異なるアプリケーション向けサーバーOSとして使われてきた。しかしExpo以降、米国ではデスクトップLinuxの話題が多くなり、一方サーバーでは、ウィンドウズとLinuxの顧客取り合いが目立つようになった。

IBMとマイクロソフトOS競争

 Linuxデスクトップフォーラム会長のブルース・ペレンス氏は「04年がデスクトップLinux元年だ」というが、多くのソリューションプロバイダは、しばらく市場ウォッチの姿勢をとり続ける。一方サーバーでは、ウィンドウズNTのサポート終了時期も近づくので、Linux陣営はNTからLinuxへのマイグレーションを積極的に呼びかける。

 最も熱心なのはIBMで、同社はExpoで「マイクロソフト NT to Linuxマイグレーションプログラム」を発表し、Linuxへ顧客を誘い込み始めた。同プログラムはNTからLinuxへ移行するツールやトレーニングを提供する。IBMソフトウェアグループLinux戦略責任者、アダム・ジョランス氏は語る。「全世界で何百万のユーザーがまだNTを使っている。しかし、問題発生時のサポートもなくなってしまうので、NTユーザーは次のプラットフォーム選択を迫られている」

 さらに同氏は、「NTからLinuxへ移行すると、ユーザーのハード選択肢が安いインテルサーバーから、堅牢なUNIXサーバーやメインフレームまで格段に広くなる。さらに、ハイエンドサーバーを採用すれば、数多くの既存インテルサーバーのコンソリデーションも一挙に進められ、TCO(所有総コスト)も極めて低くなる。このことがNTユーザーがLinuxに魅力をもつ最大のメリットのようだ」と補足する。

 さらにIBMは、NTベースのマイクロソフト・エクスチェンジを、Linux上で走るLotus(ロータス)へ移行するプログラム「Move2ロータス」の提供を開始した。これによってOSをNTから移行すると同時に、ロータスも使えるようにした。一方、マイクロソフトもIBMのLinux攻撃に対抗する「ウィンドウズサービス・フォーUNIX」の新版3.5を正式にリリースした。これでIBMなどのUNIXサーバーアプリケーションのマルチスレッティング機能も提供する。

 さらにマイクロソフトは、これまで有料だった同ソフトを新版では無料化した。さらにマイクロソフトは3.5版では、UNIXベースとウィンドウズの良好な混在環境を作り出せると強調している。マイクロソフト幹部の1人は「UNIXやLinuxユーザーの多くは、潤沢なウィンドウズアプリケーションに魅力を感じて、タイミングを見てUNIX系から離れたいと願っている」とIBM対向を強調する。ITアナリストのヨーク・レイン氏は、「当面、ユーザーではUNIX、Linux、ウィンドウズとその他暫定中間版OSが数多く混在することになるだろう」と分析する。(中野英嗣●文)

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