大遊泳時代
<大遊泳時代>第11回 スマイルカーブとジャンプ台カーブ
2004/03/15 16:18
週刊BCN 2004年03月15日vol.1031掲載
松下電器産業役員
「デジタル家電好調、ソフトサービス部門変調」が最近の大手決算の副題である。収益回復で各社IR担当役員の笑顔が久方振りである。しかし、その中身はデジタルブームで、IT中心のサービスソリューションは値下げ圧力、情報投資の低迷、丸投げ構造での薄利が足を引張っているとのこと。台湾のAcerの創業者の施振栄会長のおっしゃったスマイルカーブはどこへいったのか。私も当時はカーブに乗っかろうとはしゃいだものである。デバイスOSは、大規模な研究開発・設備投資だが、デファクト、規模メリット、グローバルサイズでニッチ戦略をとれば高利益率。セットシステムは、ボーダーレスかつ組み合せ技術で参入容易。為替要因と人件費率で低利益率とのこと。サービスソリューションは、かつての流通、アフター、CSを卒業し、IT化、外出しによる効率化、コールセンター、iDCの集約化、コンサル収入で高利益率という。なるほどエレベータ、ドキュメント機器など専門集団の世界は確かによかった。
携帯やテレビ放送の世界は部品、OS、端末、システム、キャリア、コンテンツサービス、流通のE-Eを似通った業種(亜業種というらしいが)がパートナーシップで分担してバリューチェーンを形成しているからスマイルらしい。同一企業の中では、かつてアナログの部品-端末-サービスで成り立った記憶があるが、今のIT、NETのビジネスでは成立していない。現実には下図の通り、ジャンプ台カーブである。これは学者の研究テーマであると共に企業経営者の課題でもある。「そうだねワトソン君」と言うと、「ジャンプ台なんて幼稚な言葉を使わずにシャンツェカーブといえば国際的な学説となるのに…」とおだてられた。
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