WORLD TREND WATCH

<WORLD TREND WATCH>第194回 サン、起死回生賭ける

2004/03/15 16:04

週刊BCN 2004年03月15日vol.1031掲載

 サン・マイクロシステムズは2003年7-12月の6か月決算を発表したが、同社売上減少に歯止めはかかっていない。当期売上高の前年同期比は相変わらず4%以上のマイナスで、特にハードを中心とする製品売上高減少が激しい。サンの売上高ピークであった00年と比べると、製品売上高は59%減と、ほぼ40%までに激減している。

AMDでローエンド戦略

 特に減少が激しいのが、Linuxインテルサーバーの攻撃を受けているローエンドUNIXサーバーである。このためサンは64ビットで自社「Sparc(スパーク)」チップと併行してAMDのOpteronを採用し、64ビット・ローエンド強化に乗り出し、その第1弾「サンファイアV20z」を04年2月に発表した。この発表の席上、サンのスコット・マクネリCEOは次のような企業買収を公表し、発表会出席者に驚きを与えた。

 「サンは、当社創業者の1人、アンディ・ベクトルシャイム氏が設立したAMDサーバー開発企業のケアリアを買収することで合意した。同時に同社設立のベクトルシャイム氏もサンに迎えて、AMDサーバー担当の上級副社長としてサン復権に活躍してもらう」マクネリCEOは「ベクトルシャイム氏を再度経営陣に加えて、エド・ザンダー社長退任で弱体化した経営陣の強化も考えている」と付け加えた。また同CEOはケアリアを買収する目的についても説明した。「ケアリアはサンがローエンド強化のためAMD採用を検討していた時、AMDに特化した64ビットサーバー開発企業であることを知り、同社技術を利用するため買収することを決断した。さらにベクトルシャイム氏は自分やビル・ジョイ氏とサンを創業した時のメンバーの1人で、1番の社員番号のまま当社人事データにファイルされている。優れた技術者である彼を迎え入れたことで、サンの行く道に太陽が照り出したように感じる」

 サンのAMDサーバーはLinuxと「Solaris(ソラリス)」をOSとして、ユーザーは選択できる。サンはインテル32ビットMPUでもLinuxサーバーを発売しているが、サン自身はサーバー市場の本命プロセッサは既に64ビットであることを再三強調していた。このため、サンは32ビットのインテルとの互換性がないインテルItanium2でなく、ユーザー資産のソフトがそのまま使えるOpteron採用に踏み切った。サン、スパークベースのラック型ローエンドモデルは最小構成でも4500ドル(50万円)であるが、スパークより量産され安いOpteronサーバーは2700ドル(30万円)から使える。こうしてサンはローエンドの価格帯に2つのサーバーラインを投入することで、安いLinuxサーバー攻勢を防御することになる。著名な米国技術投資家、ロジャー・マックナミー氏はサンのAMD採用は「諸刃の剣」だと次のように論評する。「AMDでサンのローエンド戦略は強化されるだろう。しかし、もしこれが成功すれば、サンが頑なに守ってきた自らの垂直統合経営の終焉を意味し、サンは独自モデルを失うことになる」(中野英嗣●文)
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