WORLD TREND WATCH

<WORLD TREND WATCH>第193回 SI売上増のカギを握る

2004/03/08 16:04

週刊BCN 2004年03月08日vol.1030掲載

 米国IT業界では、ITとデジタル家電の区分がなくなるデジタルコンバージェンス(デジタル融合)が、企業システムのインテグレーションにも強い影響を与え始めると認識されている。例えばデルの液晶テレビ市場への参入も、デルはこれをスタンドアロンのコンシューマ家電として販売するだけでなく、パソコン周辺機器と位置付けていることから、コンバージェンスもSIに影響するとの分析も見られる。

デルが始めたデジタル家電

 デルは周辺機器のデジタルテレビはパソコンモニタとしても使えるだけでなく、今後はオフィスや生産、サービス現場に増える多機能映像情報端末と説明している。従ってパソコンをコントローラとする液晶テレビが企業内のあちらこちらにイントラネット端末として見られるようになる。デジタルテレビはパソコンより価格も高く、付加価値も大きい。従ってこれだけを考えてもデジタルコンバージェンスはソリューションプロバイダ(SP)の売上増、利益増に役立つと考えられる。

 米国では既にゲートウェイなどパソコンベンダーが液晶テレビを販売している。しかし、ゲートウェイなどの売り方は家電ストアに商品を並べ、あくまでホーム向け家電として販売しているに過ぎない。デルのデジタルテレビに対する見方はゲートウェイなどとは全く異なると、同社周辺機器・ニュービジネス・クライアント・プロダクト担当役員のパムポッシュ・サットシ氏は次のように語る。

 「デルはテレビにパソコン周辺機器、ネット端末の位置付けを見付けたので、この市場へ参入した。従ってデルがデジタルテレビ市場へ参入し、ソニーやパナソニックと競合し始めるという、アナリスト解説は納得していない。デルはテレビだけでなく、デジタル家電で企業ITに役立つ商品発掘にこれからも努力する。多くの既存デジタル家電には、企業ITシステム構築に役立つ機能が見付けられるはずだ」

 デル以外に米国ではコンバージェンスをシステム構築に利用しているのが、システム組み立て業のハウプポージコンピュータだ。同社はIBM、PowerPCをプロセッサとするLinuxベースのインターネットディスプレイ端末「メディアMVP」をこれまで99ドル(1万1000円)で販売していた。同社は最近、米国開業医オフィス3万か所を結ぶ大手製薬会社のネットワーク構築を受注し、3万台のメディアMVPを開業医端末に採用すると発表した。

 このネットワークは、製薬会社という大手企業のミッションクリティカルシステムの一部だ。従って当端末も元来は家庭リビングにおかれるデジタル家電であったが、これが製薬会社エンタープライズシステムに組み込まれる典型的コンバージェンス現象と考えられる。当端末販売を手がけてきたSP、コロニウスシステム副社長、アラン・ケーニ氏は次のようにいう。「われわれは既に当マルチメディア端末の企業システム用途で20種以上のアプリケーションを発掘した。従って家庭用の当社端末の50%以上は企業ユースになると予想している」(中野英嗣●文)

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