立ち上がるグローバルサプライチェーン ロゼッタネットの衝撃
<立ち上がるグローバルサプライチェーン ロゼッタネットの衝撃>26.クロスボーダーVMI WG(中)主な活動内容
2004/03/01 16:18
週刊BCN 2004年03月01日vol.1029掲載
まず、オンショア(日本への輸入)取引については、保税倉庫をVMI(Vendor Managed Inventory)でうまく運用すれば、生産直前まで部品購入と関税支払いを遅らせることで、在庫削減とキャッシュフローの改善ができる。特に昨年の関税法第95条改正により、非居住者による輸入申告が可能となり、海外サプライヤーによる国内バイヤー向けのVMIオペレーションが実現可能になったが、その具体的な運用方法については各社とも不明なところが多く、研究の余地がある。
次にオフショア(他国での輸出入)取引であるが、特に中国については、進料加工や来料加工などの「加工貿易」の制度を活用し、関税と増値税(日本での消費税にあたる)を免税で扱う仕組みを取り入れれば、生産コストの削減による競争力の強化が可能である。しかし、現実は税制の適用基準が地域で異なったり、不明な場合が多いといった、実施上の困難が伴う。また、現地の物流・倉庫会社との情報共有には障害が多く、緻密に物の出入りを制御するにはまだまだ情報のリアルタイム性が不十分だと言える。
このWGでは最初の半年ほどをフィジビリティ・スタディ期間と位置付け、上記のような現状をより正確に理解し、関連する知識の向上を図ることを第1の目標とした。まずNECロジスティクスや近鉄エクスプレスなどの物流企業と、日本ロジスティクスシステム協会のご協力により、国際物流や税関関連の詳しい解説を受け、メンバーで議論しながら主要な課題を洗い出し、考えられる対策を真剣に検討した。
また、各国の物流関連ロゼッタネット諸活動を概観し(例:マレーシアの通関電子化プロジェクト)、詳しく評価した。次に富士通、松下電器産業、三洋電機、シャープ、NECおよびタイコエレクトロニクスアンプのご協力により、各社の既存ビジネスモデルを紹介してもらい、その類似点や相違点を細かく分析した。その結果として、4種類の代表的な国際取引モデルを抽出して、それらのシナリオを可能な限り「共通化」し、リファレンスモデルにしていくことを活動の主眼に置くように方向付けた。図は最初に検討を始めた「国内保税VMIモデル」の概念図であるが、これを元に「共通シナリオ」を仕上げていく具体的手法については、次回に詳しくご説明したい。(インテル ロゼッタネットジャパン クロスボーダーVMI WG主査 木村 一仁)
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