企業のIT調達モデルを変える デルの挑戦と死角

<企業のIT調達モデルを変える デルの挑戦と死角>9.超えられない“N”の壁(2)

2004/03/01 20:43

週刊BCN 2004年03月01日vol.1029掲載

 米デルが2月に発表した2004年1月期決算は、売上高、利益とも過去最高となった。営業利益率は前期の8.0%から8.6%へアップし、合理的なビジネスモデルはさらなる進化を見せた。この好業績には、日本市場における躍進がかなり反映されている。では、このビジネスモデルを日本の法人向けパソコン市場で貫き続け、デルはトップシェアを狙えるのか。具体的に言えば、13%あるシェアをどんどん引き上げ、シェアトップに君臨するNECを引き下ろせるのか。(坂口正憲(ジャーナリスト))

 デルがパソコン事業で高い収益を得られるのは、競合他社に比べてずば抜けてパーヘッドが高いからだ。例えば、デルはこれだけ事業規模を拡大しながら依然、名古屋、大阪など主要市場でさえ外勤営業担当者の数は1-2人。本格化な地方拠点を持たない。川崎本社の内勤営業が主要な法人客をフォローする仕組みだ。直販なのだから当然と思われるかもしれないが、企業がさらなる売上獲得の機会を前にして、組織拡大を自重するのは難しい。愚直までに自らのビジネスモデルを貫くのがデル流なのだろう。

 それに対してNECは、本社、グループ企業、販売代理店まで含めると、多少なりともパソコン事業に携わる営業担当者の数は数万人に達する。パソコン事業だけで単純に捉えるなら、デルのビジネスモデルがNECに比べて圧倒的に効率的なことは言うまでもない。ただ合理性を追究する余り、どうしても捉えられない需要もある。社内でNEC製品とデル製品を併用しながら、追加購入する際にNEC製品を選んだある地方企業の担当者はこう話す。

 「(販売代理店の)営業やサービス担当者が電話1本で駆けつけてくれるNEC製品の方が安心できる。(03年8月に猛威を振るったコンピュータワーム)MSブラスターの時も、何も言わなくても向こうから来てくれた」社内のITリテラシーが十分成熟していない企業も多い。そうした企業に対しては、デルの合理的なビジネスモデルは通用しにくい。今後、デルが法人向け市場で順調にシェアを伸ばし続け、ある時点で合理性だけではブレークスルーできない壁にぶつかった時、どのように対処するのか。興味深いところだ。
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