WORLD TREND WATCH

<WORLD TREND WATCH>第191回 ライセンスビジネス曲がり角

2004/02/23 16:04

週刊BCN 2004年02月23日vol.1028掲載

 2003年12月、マイクロソフトの6か月決算売上高は、前年同期比13%増、純利益も14%増と相変わらずの好調振りだ。しかし、マイクロソフトのソフトの長期方式「ソフトウェアアシュアランス(SA)契約)」や、既存ユーザーのソフトアップグレード時の「アップグレードアドバンテージ(UA)」の売上高に変化が見られ、同社のライセンスビジネスも曲がり角にあると解説する米アナリストも多くなった。03年12月の四半期決算のUA売上高2億9600万ドルに対し、前年同期売上高は4億8000万ドルであった。これは従来的な買取り一時契約企業のアップグレードが減少していることを物語る。もちろんマイクロソフトは既に従来的契約からSA契約への移行を促しているので、UA売上高減少は当然の動きだともいえよう。

マイクロソフトに変化の兆し

 しかし一方、新方式SA契約での未計上売上高も大きく減少しているのである。02年12月の未計上売上高は88億3600万ドルであったのに対し、03年12月の同額は78億5200万ドルと9億8400万ドルも減っているのだ。未計上売上高は一般企業の「受注残」と同じ性格のものだ。こうして従来的UAと、新方式SA未計上分の両方の減少に、アナリストは注目する。マイクロソフトはソフトのライセンス別売上比率は公表しない。これに関しIDCは、OEM(相手先ブランドによる生産)が10%、一時契約分が75%、新ライセンスSAが15%と推定している。相変らずまだ圧倒的に従来方式が多いと推定される。これに対し、マイクロソフトのジョン・コナースCFO(最高財務責任者)は03年12月の決算発表時に、「長期契約方式への顧客からの理解は得られ始めており、近いうちにわが社の売上高の大部分を占めるようになる」と強気発言する。

 ウォールストリートのアナリスト、リチャード・ガードナー氏は次のように言う。「米国の多くの大企業のUAが04年6月に契約終了となる。この時顧客がどう動くのか。これでマイクロソフトを大規模企業に発展させてきたライセンスビジネスに大変化が起きるかどうかが判明する」マイクロソフトのパートナーの1社、アローシステムズのイアン・フェルナンデス社長は、「大企業は次の契約更新時に、Linuxカードを使ってライセンス値引き交渉を始め、マイクロソフトは困惑するだろう」と語る。またIBMソフトウェアグループのラリー・ボーデン副社長は、「IBMのアプリケーションズ・オンデマンド・ポートレット付きWebSphere(ウェブスフィア)ポータルとウィンドウズを競合させることでも、ユーザーは大幅値引きをマイクロソフトに迫るだろう。事実欧州のある巨大銀行はこれでマイクロソフトに4000万ドルもの値引きを迫って契約した」と語る。マイクロソフトも無競争時代ではなくなったのである。あるマイクロソフトパートナー幹部は匿名で次のように発言した。「マイクロソフトは新規SA契約の利点を強調するが、ユーザーはソフト価格が高くなったと考えている。こうなると同社のSAビジネスも崩壊に向っていると断言してもよい」(中野英嗣●文)

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