視点

ITよテレビに大志を抱け

2004/02/16 16:41

週刊BCN 2004年02月16日vol.1027掲載

 今年のCES(コンシューマ・エレクトロニクス・ショー)で私が注目したのは、IT勢が大挙してテレビに進出したことだ。すでに液晶テレビを発売済みのデルに加えてヒューレット・パッカード(HP)、モトローラが参戦を表明。インテルに至っては、投射デバイスのLCoSを自社生産し、お馴染みのムーアの法則を適用し、コストパフォーマンスで勝負する熱の入れよう。従来はソニーのバイオのように、AV(音響・映像)メーカーがパソコンをつくるという流れで来ていたが、今やパソコンメーカーがテレビをつくる時代になったのである。

 なぜIT勢はテレビに進出するのか。まずパソコンだけでは、今後の成長は望めなくなったことが挙げられる。あらかた普及し尽くし、性能向上もなかなか需要喚起にはつながらない。目をAVに転ずると、新家電・三種の神器のデジタルテレビが大人気。よく考えてみると、それはデジタルな製品であり、それならばパソコン的な水平分業的なビジネスモデルも採用できるのではないか。ならば参入のチャンスがある──と判断したのである。

 おいおい、言っていることが違うんじゃないの?──と私は問いたい。90年代以降、IT勢力が強大になるにつれて、何と言っていたか。「テレビは死んだ」、「テレビは恐竜だ」と、旧態以前のテレビに対して大いに批判していたではないか。テレビになりかわる新時代のホームエンターテインメントの王者はパソコンであると、威勢が良かったではないか。それが、何を好きこのんで「単なるテレビ」をつくるのか。

 確かにプラズマ、液晶、LCoSなどデバイスは新しいものの、結局はジャスト!テレビであり、それはテレビプロパーメーカーのものと、何ら違いはない。違いは、デルやモトローラというブランドだけ──というのでは、あまりに情けない。

 もしテレビをやるというのなら、私は、大事なのはデバイスやビジネスモデルではなくコンセプトであると思う。パソコン屋さんがテレビをつくったって、それは文化の蓄積、クォリティに対するこだわり、ブランドイメージの差…からして、テレビ屋にかなうわけはない。そんなことより、ITでなければできない付加価値が欲しい。単に安いだけの、画質も貧弱なITブランドのテレビなんか、いらない。ITだからこその、WOW!機能が満載な新時代のテレビをぜひ、見たいものだ。テレビユーザーはビジネスモデルではものを買わない。
  • 1