企業のIT調達モデルを変える デルの挑戦と死角

<企業のIT調達モデルを変える デルの挑戦と死角>7.なぜか追随しない競合メーカー

2004/02/16 20:43

週刊BCN 2004年02月16日vol.1027掲載

 前号の最後では、企業が社内パソコンを標準化すると、デルが優位になると述べた。デルには顧客ごとの“専用モデル”(顧客が社内標準機として仕様を指定した製品)を、1台単位の発注に応じて一定納期で届けるCFI(カスタム・ファクトリ・インテグレーション)サービスがある。企業はデルの工場を倉庫代わりにして、社内標準機を必要な時に必要な台数だけ取り出せる。(坂口正憲(ジャーナリスト))

 いったんこの仕組みに乗った企業の多くは、デルから離れられなくなる。効率的な業務の流れを敢えて断ち切る理由がないからだ。社内標準機はデル製品の中で世代交代していく。競合メーカーがこのサイクルに食い込んで行くには、デルのCFI以上に魅力あるものを提案しなければならない。競合メーカーはここ数年、デルに対抗しようとウェブ直販やCTO(注文仕様生産)を強化してきた。ウェブ画面の見やすさや納期だけみれば、デルよりも優れたサービスもある。それでもデルは法人分野でシェアを順調に伸ばす。CFIで差別化を図っているからだ。

 では、なぜ競合メーカーはCFIと同じようなサービスを導入しようとしないのか。企業がTCO(システム総保有コスト)削減のため社内で使うパソコンの標準化を進めていくことは十分に認識しているはずだ。しかも、CFIは構造が複雑なわけではない。極端に言えば、CTOの延長線上で顧客別の専用モデルを作っているだけ。CTOで多種多様なモデルを生産できる体制があるならば、できないことはないだろう(特定企業には対応しているが、どの企業にも提供しているわけではない)。

 だが、競合メーカーは表立って追随していない。ある企業の情報システム担当者は、「採用の条件としてデルと同じように、出荷時にソフトのプリインストールを求めたが、『うちでは不可能です』と言われた」と話す。もちろん間接販売を主体とする競合メーカーの場合、在庫販売を手がける代理店の存在が影響しているだろう。直販へ誘導するようなサービスは、敢えて控えているのかもしれないただ、そうした競合メーカーにも直販部分がある。特に国産メーカーの直販部隊は、優良顧客を数多く抱えている。このままデルの進撃を許していると、その優良企業まで逃しかねない。
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