WORLD TREND WATCH
<WORLD TREND WATCH>第190回 正念場迎えるSCO
2004/02/16 16:04
週刊BCN 2004年02月16日vol.1027掲載
Linux陣営は強気
SCOのダール・マクブライドCEOは、このLinux訴訟でIT業界の著名人になってしまった。また03年にはSCO訴訟が、どの部分の同社ソースコードがLinuxに無断で使われているのかの全容がはっきりしないという、奇妙な訴訟であるという点で、IT業界だけでなく世界の法曹界も注目していた。訴訟担当裁判所は、SCOにこの点を明確にするように求めた。Linuxに力を入れる米ソリューションプロバイダ(SP)幹部は、「この訴訟の結末を議論する段階に至っていない。今はSCOがきちんと自社保有のUNIXソースコードのどの部分がLinuxに使われているかを証拠として提出できるのかを注視している段階にすぎない」と言い切る。このSCO訴訟根拠への疑義は当初から米国でいわれていた。また業界の噂として「02年6月に同CEOが就任してわずか8か月後にIBM提訴をしたことから、訴訟のために第3者から雇われた」ということもささやかれた。
これに関しマクブライドCEOは「訴訟のため雇われたというのは悪質な噂だ。自分の役割は、当社ソースコードを不法使用して普及したLinuxの不正を世に問い、それによって奪われた当社の売り上げと利益を奪い返し、SCO株主に報いることだ。事実IBM提訴後、当社エクイティは5000万ドルも上昇した」と反論した。
同SCOは上昇が期待されるSCO株を報酬にすることで、ユーザーを提訴するための著名弁護士も雇った。しかし、一般的に、訴訟という事実は世界でLinux普及の阻害要因になっていないというのが、米IT業界の共通した認識のようだ。
それは、巨人IBMが簡単にSCOに敗れるとは、大企業IT部門では信じられないからだ。さらにレッドハットやHPは万が一、ユーザーに訴訟で金銭的負担が発生した場合、これを補填する基金も設けたからだ。Linuxでは著名なSP、イデアル・テクノロジーのダグラス・ホック社長は、「LinuxユーザーはSCOの脅しを全く無視している。IBMが負ければマイクロソフト以外はすべて負けることになり、誰もこんな結末は予想しない。さらにLinuxの大ユーザーはワシントンの行政機関や国防総省であり、これもLinuxユーザーにとっては心強い仲間だ。いずれにせよ、04年は訴訟被告側のIBMやユーザーではなく、SCO自身が正念場を迎える」と強気に語る。(中野英嗣●文)
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