米国流通最前線を行く

<米国流通最前線を行く>第3回 コンプUSA デジタル家電にシフト

2004/01/26 20:42

週刊BCN 2004年01月26日vol.1024掲載

 コンプUSAは、1984年の創業当初からパソコン関連商品を中心に扱ってきた。利益を生むかどうか未知数だったパソコンで躍進した結果、シアーズやウォルマートなどの一般小売業をはじめ、それまで家電中心だったベスト・バイやサーキット・シティもパソコン販売に参入するなど、コンプUSAが米国流通市場で果たした役割は大きい。しかし現在、同社の経営は厳しい状態にあり、起死回生を図る施策を展開している。

オンライン販売に活路を

■1984年創業の小売りチェーン

 コンプUSAは全米に約220店舗(2004年1月現在)を展開する、コンピュータ関係を中心とする小売りチェーン店である。1984年にテキサス州ダラスで創業。当初はゲームソフトなどを主として扱い、その後低価格のパソコンが流通し始めた頃にハードウェア中心にシフト。プリンタをはじめとする周辺機器と、各種消耗品の販売を充実させ、大規模店舗への改革を進めた。

 現在、同社の経営権はメキシコのコングロマリット「サンボーングループ」が所有している。90社を超えるITメーカーの商品と2000種を超える各種のソフトウェアを扱う。従業員は約1万5000人(03年5月時点)。政府機関、民間企業や教育市場向けのテクニカルサービスやサポート体制を整えており、幅広い層の客を確保している。

 直接のライバルは、ベスト・バイ以下全ての同業者となるのだが、近年は幅広い商品群を扱う大手チェーンに比べやや分が悪い。パソコンが特別な商品で、経験豊かな店員によるアドバイスが必要な時代は既に去り、現在ではパソコンそのものよりも、プリンタやデジタルカメラなどのコンシューマ向けの商品に主力商品が変化してきた。

 しかし、より多くの商品をより安い価格で提供し、さらに十分なアフターサービス体制をもち、それらをより多い店舗で展開できるベスト・バイなどに比べて劣勢は免れない。そのため、パソコンに加えて液晶テレビやゲーム機、DVDプレーヤー、ホームシアターセット、携帯電話などの販売に力を入れている。

■iMacのヒットで売り上げ伸ばす

 本来、ソフトのタイトル充実が特徴の1つであったはずのコンプUSAだが、多くのライバルが同じくソフトの充実を重点課題として積極的に力を入れ始めたため、この面での優位性も急速に失ってしまっている。

 98年にはストアinストアと称して、コンプUSAの店舗内にアップル製品を扱う小規模店舗を設けた。この販売方法は、ちょうど発売時期が重なったアップルのiMacの大ヒットとともに売り上げを伸ばし、同社の大きな収益源に成長した。

 また、ライバルであるタンディー社からのコンピューター・シティ・チェーンの買収や、AOLとの提携による、AOLに特化した特別仕様パソコンの販売、さらにはコンピュサーブとの提携による、無料パソコンキャンペーンなど、積極的な経営は話題を呼んできた。

 しかし、ウィンドウズ98の発表以後のパソコン関連商品の低価格化や、直販を主とするデルやゲートウェイなど新進のライバルたちの出現、そしてオンラインショップの普及などから、99年頃から急速に失速。99年度第3四半期(1-3月)には494万ドルの純損失を計上した。現在では大規模なリストラ、不採算店舗や流通センターの閉鎖などを実施。01年には評価の高かったカスタマーサポートセンターを資産売却するなど、経営の健全化を目指している。

■待たれる“次の一手”

 同社では、従来のスタイルでのパソコン販売は厳しい状況と見て、01年7月に韓国の三星電子と提携。DVDプレーヤーや液晶テレビなど、いわゆるデジタル家電を中心とした品揃えにシフトしようとしている。この方針は先のアップルとの提携の経験などから、コンプUSAにとっては手慣れた手法であり、その成功の可能性も高い。

 しかしその一方で、タブレットPC発売時に高価格のまま店内に専用コーナーを設け、結果的に販売がふるわない事態を招くなど、いまだ経営に確固たる方針は存在しないままだ。

 同社の広報によれば、今後はより一層オンラインでの販売へシフトし、将来の企業の再生を目指しているという。自社の実店舗とオンラインショップをより一層統合するために、サイトの改編を継続するとともに、自社内のシステムも、マイクロソフトをはじめとする大手ベンダーと提携して積極的に改革を進めている。

 最終的にはこのシステム改革により、コンプUSAの顧客は同社のウェブサイトで修理の状況や近隣の実店舗での商品在庫の有無や価格を確認できるようになるという。

 また、従業員はシステム上で価格決定の情報や各店舗間の情報などをリアルタイムで入手できるようになっている。これらいくつかの面での積極的なテコ入れによる社内の刷新と共に、従来から評価の高かったサービス体制や専門性の維持、そして訓練による従業員の質の再生により、再び市場での地位を築くことができると考えているという。

 しかし、多くのライバル企業も同様の施策を採っており、コンプUSAにとって独創的な一手が待たれるところだ。

【会社概要】
■ 企業名:コンプUSA(CompUSA Inc.)
■ 社長:カルロス・スリム・ドミト
■ 本社住所:テキサス州、ダラス、
         ダラスパークウェイ・ノース14951番地
■ 企業形態:株式非公開
■ 決算月:6月
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