企業のIT調達モデルを変える デルの挑戦と死角

<企業のIT調達モデルを変える デルの挑戦と死角>3.TCOで安さ判断する企業

2004/01/19 20:43

週刊BCN 2004年01月19日vol.1023掲載

 デル製品を支持する企業が増えているのは、ハード保守を標準で組み込みながら、低価格を実現しているからだ。つまりデル製品のTCO(システム総保有コスト)は低い――前号でこう述べた。米ガートナーの調査によれば、ネットワーク環境下でパソコンを所有すると、購入コストとほぼ同額の保守コストが発生する。IT機器は購入後も何かと保守を必要とする設備資産なのだ。TCOの考え方が普及した今、企業の情報システム担当者はハードの本体価格だけの安さにけっしてなびくことはない。購入後の保守コストを含めて安さを見極める。(坂口正憲(ジャーナリスト))

 仮に企業がメーカーやシステムプロバイダとオンサイト保守契約を結ぶと、通常は1台当たり年間1万円前後の費用がかかる。それだけデル製品には付加価値の高いサービスが標準で含まれている。それが可能なのも本体の製造原価が低く、保守サービスも厳密なコスト計算のもとサポート専門業者に完全アウトソーシングしているからだ。一方の国産メーカーの製造原価は高く、ハード保守を決して低コスト体質ではない子会社に委託している。そのグループ企業も独立採算を目指している場合が多く(NECや富士通の保守子会社は株式を公開している)、親会社のメーカーも無理な保守料金は押し付けられない。

 そのため、デル製品を購入した企業の情報システム担当者が異口同音に語るように、「保守料金を含めると国産メーカーの製品はデルよりも高くなってしまう」わけなのだ。また、メーカーからハードを仕入れて販売するシステムプロバイダの場合、ハードの有償保守は本体の低マージンを補う利益源だけに、これも引き下げたり、削ったりできない。

 しかし、これまでハード保守に高い料金を支払ってきたユーザーの意識が変わってきた。人口2万人のある自治体の情報システム担当者がこう指摘する。「これまでハードの保守代に月30万円ほど支払っていた。何も支障がなくとも年間400万円が消えていた。その点、新しく購入したデルの製品には保守サービスが標準で付いており、対応も迅速で良い」。ハード保守に対するユーザーの意識変化がデルの躍進を後押しする要因の1つになっている。
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