米国流通最前線を行く
<米国流通最前線を行く>第2回 サーキット・シティ 高い評価の接客型サービス
2004/01/12 20:42
週刊BCN 2004年01月12日vol.1022掲載
細かい価格設定で利益拡大へ
■対面販売が基本サーキット・シティは米国で売り上げ第2位の家電販売の大手チェーンである。1993年にそれまでトップだったダンディー・ラジオシャックを抜き1位になったが、95年にベスト・バイに抜かれた。
サーキット・シティの店舗では、詳細な商品説明ときめ細かなサービスによる対面販売が基本。セルフ/倉庫型店舗が多い他社とは一線を画す。
売上高はベスト・バイに匹敵し、現在では成長率も利益の伸び率も上回る。
各店舗の床面積は平均で1980㎡程度。取扱商品数も平均で3万弱と、最大8万SKU(常備在庫品)にも達するベスト・バイに対しやや見劣りする。また1店舗あたりの収益率も大きく離されている。03年時点で、店舗数は625。4万人弱の従業員により9900億円以上の売り上げを誇る。
同社の最大の特徴は、徹底したサービス体制である。担当する商品群ごとに専門知識をもつ営業社員を配し、詳細な商品説明からアフターサービスまで一貫して顧客サービスに努める。
店舗内でも実際に商品を手に取りながら、各担当者から納得いくまで商品説明を受けることができるなど、日本の販売スタイルと似ている点も多い。
■すばやい経営判断
オンラインショップでも、各商品の詳細が初心者にもよくわかるように配慮されており、そのサービス精神は店舗でのそれと同様に徹底している。消費者側からも、商品購入後に故障した場合、他社ならあきらめてしまうが、サーキット・シティなら交換してもらえる、と言われるほどその評判は高く、この面でも日本的と言えるだろう。
また、新作のDVDタイトルの大量入荷をテレビコマーシャルで大々的に宣伝するなど、商品の鮮度と展開の早さを重要視しており、この点で顧客の満足度を維持している。
一方、他社に比べて不利と言われる販売価格について、同社のゲリー・ミーレンフェルド・サプライチェーン担当シニアバイスプレジデントは、「今後は製品の価格を細かく設定することで、更なる利益拡大を目指している」と話す。
また同社は積極的な経営判断でも知られている。映画ソフトがDVDへ移行してきたことから、他社に先駆けて店舗での映画ビデオソフトの販売中止を決定するなど、経営判断に関する話題には事欠かない。01年にはオンラインショップの重要性をいち早く見い出し、アマゾンと提携した。リスクを避けながら多数の顧客を新規に確保したことや、いち早くブームを見越し、商品構成のなかでもパソコン関連に重点を置くなど、一見乱暴にも思える経営判断は、実は非常に的確であるとアナリストの評価も高い。
■サービス体制がウィーク・ポイント
一方同社のウィーク・ポイントは、高評価を得ているサービス体制そのものに起因するものがほとんどだ。
専門知識を必要とする社員教育コストの高騰、容易に返品できることによる不良在庫の増加などに加え、セールス・コミッション制のデメリットとして、担当外の顧客には冷淡な販売担当者の増加も問題となりやすい。行き届いた顧客サービスによって、売上高に対する販売時間短縮が難しく、レジが集中型でないために、会計時に多くの人的資源が必要な点もマイナス要因として指摘されている。
また、自由に店内を見て回りたい顧客を倉庫型店舗に奪われることが多い。さらに、いずれの家電量販店も商品構成がゲーム機器やDVDなど若年層向け製品が主流となってきているために、この面での打撃は特に大きい。サーキット・シティでは全社的にスリム化を進めており、傘下企業の分離独立や資産売却などに加え、IT経営システムの導入など、積極的に経営改善策を行っている。
同社は業界トップのベスト・バイに対し、常に競争心を持ち続けている。週末に新聞に織り込まれる広告チラシでも、その価格設定や商品構成はもとより、体裁やページ数にまで、ベスト・バイへの対抗心がうかがえる。テレビコマーシャルなども同様だ。首位奪還のために必要なのは、高い評価のサービス体制を維持しつつ、更なるコスト削減による利益率向上だ。オンラインショップも含めた価格競争力の早期対応と、他社との差別化を明確にする独自性の演出。そして最も重要なのは、それらを売り上げで裏付けることができる、利益率が高く、かつ顧客に対して魅力的な主力商品の開拓だろう。
【会社概要】 |
■ 企業名:サーキット・シティ(Circuit City Stores,Inc.) |
■ 社長:W・アラン・マッコーフ |
■ 本社住所:バージニア州、リッチモンド、 メイランド・ドライブ9950番地 |
■ 企業形態:株式上場済み、NYSE:CC |
■ 決算月:2月 |
■ 2002年度売上高:99億5350万ドル |
■ 過去1年間の成長率:22.2% |
■ 2002年度収益:1億610万ドル |
■ 過去1年間の収益の伸び率:51.5% |
■ 従業員数(2002年度):3万9432人 |
■ 過去1年間の従業員数の伸び率:19.8% |
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