OVER VIEW
<OVER VIEW>世界のIT業界、緩やかな市場成長へ Chapter4
2003/12/22 16:18
週刊BCN 2003年12月22日vol.1020掲載
提供メニュー多様化で伸びるサービス市場
■サービスに賭けて復権したIBM
「自分はIBMで2度幸運に恵まれた。第1は月面人類着陸のコンピュータ指揮者で当時IBMサービス部門トップのデニー・ウェルシュ氏に会ったことだ。第2はIBMがインターネット時代の到来を見越しネットワークコンピューティングに賭けたことだ」
ガースナー前CEOはハードのフルベンダーであったIBMを世界一の巨大ITサービス企業に転身させた。IBMのサービス事業は直近10年間、同社全売上高が僅か26%した伸びなかったなかで2.5倍と大きく伸びた(Figure19)。
さらにネットワークに賭けたことで、IBMは97年にeビジネスコンコンセプトを提唱し、「eビジネス=IBM」という図式を世界市場に定着させて、そのソリューション事業で独走し、サービス売上高を大きく伸ばした。長い間のIT不況から脱出しつつある現在の世界IT市場でも、コモディティ化したIT商品の価格デフレはとまらず、台数の伸びも金額の低下を支えきれない。

さらに90年代後半からユーザーITのホスティング(運用管理)を受託するアウトソーシングが事業の柱の1つになった。これに関連し、iDCサービスも始まり、02年以降にはITだけでなく顧客ビジネスのコンサルティングとITインフラ構築サービスが一体化する新しいサービスカテゴリーが業界で注目されるようになった。

■戦略投資へのシフト サービスとしてのソフト事業へ
IBMのサム・パルミザーノCEOはIT業界全体のサービス事業へのシフトの動きを次のように説明する。「IT産業はこれまでの箱としてコンピュータを売る時代から、コンピューティングパワーをサービスとして顧客に提供する業態に変わった」。世界の企業経営者は、企業売上高に占めるIT投資額の比率を注目する。わが国では経済産業省の「平成14年情報処理実態調査」によると、01年当比率は1.3%と上昇気運にある。米国では業種横断的平均で1.7%とも報告されている。

この課題解決はIT業界全体にとっても重要である。とくに戦略的投資増加は、新しいウェブベースのアプリケーション、ERP、CRM、SCMなどの利用をユーザーに促すことと直結する。しかし、新規アプリケーション採用は初期投資も大きく、これに関するITスタッフも増員となる。これを避けるため、米有力ソフトベンダーのシーベル、ピープルソフトなどが自社CRMをホスティングで提供し始めると、採用が急速に増加した。既に米国大企業、中堅企業では44%がソフトのホスティングサービスを利用中か、利用を決定している(Figure22)。

■次々に出現して多様化する、ITサービスメニュー
インターネット基盤のウェブアプリケーション時代となると、ITサービスの内容は目まぐるしく多様化している。企業は既存アプリケーション向けの運用コストを削減して、戦略的アプリケーション採用へ振り向けると同時に、ネットに絡む多くのサービスニーズにも対応しなければならない。これらのなかでも目立たないが堅実な需要があるのは、企業が所有するIT資産を管理するサービスだ(Figure23)。

またウイルス攻撃も激しくなるとセキュリティ確保のためのサービス、あるいは被害がでた場合のレジリエント(復旧)にもIT部門は責任をもたなくてはならず、このための新サービスも出現した。また9.11テロ以降は、テロ攻撃などの災害復旧、および攻撃されてもビジネスを停止しないようなビジネスコンティニュイティ保証のサービスもとくに米国では需要が多くなっている(Figure24)。
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