立ち上がるグローバルサプライチェーン ロゼッタネットの衝撃

<立ち上がるグローバルサプライチェーン ロゼッタネットの衝撃>15.富士通の取り組み II

2003/12/08 16:18

週刊BCN 2003年12月08日vol.1018掲載

 前回、富士通のロゼッタネットへの取り組みの概要を紹介した。今回は調達分野での適用について述べる。当社では1987年頃、VAN型EDI(電子データ交換)による注文情報などの取引基本情報に取り組み、97年頃からはインターネットの普及によるサプライヤーへの部品所要(需要)の提示や、納期回答のやり取りを通して効率化を実現してきている。こうした流れのなか、次のステップがグローバルSCM(サプライチェーンマネジメント)の実現、リアルタイム化である。

 SCMの分野では、企業間の取引を自動化することで情報連携の高速化・効率化、そして迅速な意思決定を実現する。企業ごとに異なるシステムの連携を行うには、企業間取引の標準化が重要な条件である。ロゼッタネットはグローバル型サプライチェーンモデルであり、より多くの企業が参画し、利用することによってサプライチェーンの強化、企業間取引全般に関わるオペレーショナルコストの削減、業務ビジネススピードの向上を実現するものである。そこで、当社としては現在、IT業界を中心に電子部品、半導体製造の分野で注目を集めているこのロゼッタネットを採用した。

 具体的には受発注、所要(需要)提示、納期回答といった部分にロゼッタネットを活用した。サプライヤーとの連携として、01年12月より国内外10数社(京セラ、インテル、マイクロン・テクノロジー、シスコシステムズなど)と運用を開始している。ロゼッタネットでは、見積依頼から検収までといった調達業務プロセスが実現できる。このため、ロゼッタネットは1つの体系の中で様々なビジネスプロセスに適用できるというのが最大の利点である。なお、当社のネット調達システムは他にもウェブ-EDIをはじめとした数種の電子商取引をサポートしている。これらはウェブを利用したシステムであり、当社ではこのBtoBシステムをASPとしても提供している。

 さて、ロゼッタネット適用の効果であるが、業務の効率化による時間とコストの削減である。注文リードタイムが1/2に短縮されたことにより、余剰在庫発生のリスクが軽減し、納期回答に要する時間が1/3になった実績がある。また、預託取引を行っているサプライヤー側では、預託在庫日数が1/3に短縮されたことで、棚卸資産の圧縮にもなった。今後は設計分野にも取り組んで行く。例えば当社の設計部門が、サプライヤー側の新製品のスペックなどの情報を素早く入手すれば、設計段階で参考にしたり製品に反映させることができるようになる。こうしたリアルタイムに情報を共有できる利点にもっと取り組んでいきたい。(富士通 ビジネス連携システム部長 ロゼッタネットジャパン運営委員長 青木 健)

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