大航海時代
<大航海時代>第22篇●新しき勇者たちへ 第109話 「当り屋につくな」
2003/12/02 16:18
週刊BCN 2003年12月01日vol.1017掲載
水野博之 高知工科大学総合研究所長
「ゆらぎ」といえば、最近、株価もまた大いにゆらいでいるようである。株もまたゆらぐから面白みがあるわけで、このゆらぎを利用して「さやを取る」のが株式取引の醍醐味である。もっとも、さやを取るつもりがさやを取られてしまって、まことに無念、ということもあるから油断はできない。そこで、何とかの神頼みで、専門家の意見を聞くことになるが、これがなかなかもって頼りにならない。筆者の長い経験に照らしても、専門家の言う通りにやったら、たいがい失敗をする、ということになる。それはある意味では当然で、専門家というのは、その時々、大いに勉強はするのだが、勉強というのはあくまでも現状の分析なのであって、その延長上に物事があるわけではない。ITといえば、猫も杓子もITに走る傾向になるわけで、いわば世の中の講釈師が専門家なのである。もちろん専門家の意見を聞くことは必要だ。しかし、すべてをその通りにやったらいずれは失敗することは間違いない。
この辺りを昔の人は「当り屋につくな」といった。当っている人についていくと危ない、というのである。当り屋の意見を聞きながら、自分の判断をもつ、ということが大切である。どのくらい自分の判断をもつかで株で儲けられるかどうかが決まる。これまたアントレプレナーの道なのである。
世の中は講釈師で満ち満ちていて、上は政府の役人からテレビの人気者たる学者、評論家まで、意見・講釈には事欠かないが、彼らが大儲けをした、という話はたえて聞かない。こと経済の話になると、話を聞くのは五分、あとの五分は自らの才覚による以外はない。人のやる通りやっていては、お金という怪物は決して寄りついてこないと心得るべきだ。儲けている奴は黙って儲けている。(神戸・六甲山頂にて)
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