コンピュータ流通の光と影 PART VIII
<コンピュータ流通の光と影 PART VIII>最先端IT国家への布石 第53回 宮崎県(下)
2003/11/24 20:29
週刊BCN 2003年11月24日vol.1016掲載
宮崎市、外部への情報発信にITを活用 パソコン普及の遅れをキオスク端末でカバー
■「宮崎なんでも情報箱」の整備に力を入れる宮崎市は、1996年に1億円を出資して第3セクターの宮崎ケーブルテレビを開局し、市内地域情報ネットワークの基盤を整備した。
このCATV網を活用し、99年には市内の公民館やスポーツ施設、出先機関などの公共施設をすべてをネットワーク接続した。
さらに、このインフラを活用した住民サービスとして、宮崎市ではインターネットからスポーツ施設の予約や、図書館の図書検索・予約などのサービスが利用できる「サンシャインコミュニティシステム(地域情報化支援システム整備事業)」を99年にスタートさせた。
しかし、宮崎市が02年2月に行った「インターネット利用動向調査」では、市民全体の約38%しかインターネットを利用していないという現状があり、「当初はなかなか浸透しなかった」(金丸富太郎・宮崎市総務部情報政策課長)状況が浮き彫りになった。
そこで、市民のインターネット利用の拡大を待たずに、パソコンを持っていない市民でも「サンシャインコミュニティシステム」を利用してもらえるように、専用端末の整備に力を入れ、これまでに情報キオスク端末「宮崎なんでも情報箱」を駅や市内にある公民館、図書館などの公共施設に28台設置した。
この端末で、スポーツ施設の予約案内、各届出・申請書、広報資料、報道資料のプリントサービスなど、「サンシャインコミュニティシステム」の各サービスをすべて利用することができる。
金丸課長は、「市民の情報サービス向上を手がけるうえで、キオスク端末は最も重要な窓口。面積が広い宮崎市だけに幅広く設置していき、地域の情報格差をなくしていく」と話す。今年度中にはさらに15台増やす計画で、計43台に拡大する。
また、観光客が多い土地柄を意識し、観光情報やホテル検索など観光客向けに特化した情報端末「観光情報案内端末」も宮崎駅に2か所、宮崎空港に1か所設置するなど、「全国的にみても他市に比べてキオスク端末の数は多い」(金丸課長)と、ネットワークインフラの整備だけでなく、端末の整備にも力を注いでいる。
■「みやざきe-CITYシステム」を稼動
00年には、市内52の小・中学校すべてをネットワークで結び、情報教育の促進に力を入れた。小・中学校の情報教育の充実を図るため、02年には「宮崎市教育情報研修センター」を設置。教育者のパソコン研修や、各小・中学校間が連携した教育スタイルの確立などを支援している。
このほか、高齢者や身体障害者へのパソコン操作や、市民のホームページ作成などを支援する「ITボランティア協議会」を03年設立するなど、教育機関向け以外のIT教育活動も行っている。
全国の多くの自治体で、住民への情報サービス提供の在り方に試行錯誤が続くなかで、いまだに利活用に対しての取り組みが進んでいない市町村も多い。その点、宮崎市はインフラ上に乗せるコンテンツ作りにも着手するなど、市民サービス向上を明確にしている。
今年10月にも、情報発信システム「みやざきe-CITYシステム」を稼動させた。これは、行政情報や地域情報などのデジタルコンテンツを作成し、「宮崎情報ハイウェイ21(MJH21)」などの高速ネットワークを介して、市内の公共施設だけでなく、宮崎市内の繁華街や宮崎駅などの観光客の集まる場所、さらに東京・新宿駅南口にある宮崎市の広報拠点「宮崎アンテナショップ」など、計6か所に大型のモニターを設置し、宮崎市の物産や自然を映像により発信している。これにより観光地“宮崎”のアピールや、地域産業の活性化を図るのが狙いだ。
金丸課長は、「宮崎県という土地柄を特色とした情報はいくらでもある。今後はITを利用して、どのようにたくさんの人に、その魅力を伝えていけるかに焦点を絞った取り組みが軸になっていく。みやざきe-CITYシステムはその第一歩」と語る。ITを住民サービスの向上という市民向けだけでなく、宮崎市以外の人々に対する便利な情報発信の手段として活用を進めていくという。
◆地場システム販社の自治体戦略 |
デンサン
■利益率の高い案件獲得へ宮崎県と鹿児島県の一部でビジネスを展開するシステム販社のデンサン。設立は1966年で、公共分野のシステム構築・運営に長年携わってきた宮崎県内のシステムインテグレータだ。
自治体の情報システム構築事業を中心に成長し、70年代には「44市町村すべての情報システムを手がけた」(矢野重頼・公共事業部長)実績を持つ。現在でも宮崎県庁の地図情報システム(GIS)をはじめ、13市町村の自治体システムを担当している。
しかし、NECや富士通といった大手ベンダーの進出により、公共事業については「苦戦を強いられている」(矢野部長)状況にある。
現在、公共分野のビジネスが売上高に占める割合は、全体(約44億円、02年度実績)の3分の1まで縮小した。
それに加えて、「入札制度の導入で価格競争が激化しており、利益率が大幅に低下している」(同)という。
市町村合併が他府県よりも大幅に遅れている状況にあって、今後急速に進むであろう合併関連の自治体特需には、「大手ベンダーに奪われたシェアを奪い返す絶好のチャンス」(同)と、意気込みを見せる。
その一方で、「やみくもに受注するのではなく、利益率の高い案件に的を絞って手がけていく」と、慎重な姿勢ものぞかせる。
その背景には、民間需要が金融や医療分野を中心に好調で、利益率が低い公共分野に人員を確保するよりも、利益率の高い民間企業の受注に人的リソースを投入した方が良いという考えからだ。
例えば、医療機関向けソリューションでは、10個のソリューションメニューを用意するなど、ラインアップを豊富に揃えていることが受注獲得の面で奏功している。
また、観光地という土地柄を意識し、ホテルやゴルフ場向けソリューションなどもパッケージ化して販売している。
公共分野のビジネス拡大を横目で見ながら民間需要も好調で、「取捨選択がキーワード」(同)という。
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