中国ソフト産業のいま

<中国ソフト産業のいま>44.海外開発でこそIT駆使

2003/11/17 20:43

週刊BCN 2003年11月17日vol.1015掲載

 前号では、中国企業へオフショア開発を委託する場合、日本と中国の間を橋渡しするブリッジSE(システムエンジニア)の存在が重要だとした。そして、日本での就学・就職経験を生かしてブリッジSEとして活躍する中国人も多いと述べた。オフショア開発を成功させるには、こうしたヒューマンファクター(人的要因)を抜きには語れない。ただ、開発プロジェクトの規模がある程度大きくなると、人間業だけではマネジメントできなくなるのも事実だ。(坂口正憲)

 大規模ソフト開発で生成するプログラムの量は膨大で、作業工程は細分化され、多くの技術者が作業に携わる。1つのプログラムが仕様変更やバグ修正により何回も書き直され、プログラム同士の整合性を保つのは至難の業になってくる。特に日中の分業体制でソフトを開発する場合は、こうした作業工程の管理が難しくなる。中国側と日本側で作業工程の“同期”が取れず、二重開発やデータ損失、未検証プログラムの実装など様々な問題が起こり、開発プロジェクトが混乱に落ち入るケースも少なくないようだ。

 IT業界は意外に「紺屋の白袴」と思える面がある。こうした膨大な情報や複雑な工程を管理するためにこそITはある。例えば、NECはITを積極的に利用して中国、インドでの大規模なオフショア開発を成功させた。NECは、八千代銀行が5月から稼働させているオープン勘定系システムの開発を担当したが、NEC本体のほかに中国企業2社、インド企業3社へ開発・検証を委託。最盛期には日本で500人、海外で400人というグローバルな開発体制で臨んだ。

 最初の頃は、「プログラムの構成や変更、作業工程をきっちりと管理できず、海外との連携がうまくいかなかった」(NEC関係者)という。そのため、管理体制の抜本的な立て直しを図り、新しいITツールを導入。日本と海外の間で情報共有を図るためにポータルサイトも構築した。ITツールにより一定基準の下でないと開発が進められないようにして、日本と海外の作業工程を完全に同期させ、二重開発や検証漏れなどのミスを防いだ結果、生産性が高まったという。ITの力を使えば、海外での開発もかなりコントロールできるわけだ。
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