WORLD TREND WATCH

<WORLD TREND WATCH>第178回 IBMのブレード戦略

2003/11/17 16:04

週刊BCN 2003年11月17日vol.1015掲載

 IBMは自社UNIXサーバー「pSeries」のブレードサーバー「PowerBlades」を2003年内に発表するスケジュールで開発している。IBMは自社インテルベースのブレードサーバー「BladeCenter」アーキテクチャをインテルに提供し、同社はこのコンポーネントをノンブランドビルダーに出荷している。IBMはインテルに続き、UNIX、Linuxブレードアーキテクチャでも世界標準の座を獲得しようと試みている。ブレード市場は急速に拡大しているからだ。

世界標準狙い急加速

 IDCは、03年に世界出荷台数で20万台、金額で6億ドル(720億円)のブレード市場は、07年には10倍の62億ドル(7400億円)になると予測している。多くのUNIX主体のソリューションプロバイダ(SP)は「UNIX、Linuxでもサーバーコンソリデーションによって、1台のラックやシャーシに収まるサーバー群で、複数アプリケーションを処理する動きが強まっている。従って、IBMのUNIXブレード市場も大きくなる」と期待する。

 世界的にUNIXサーバー市場は大きく落ち込んでおり、特にトップのサン・マイクロシステムズ、第2位ヒューレット・パッカード(HP)の、この売上高はともに2ケタ落ち込む。これはウィンドウズサーバーに浸食されているからではなく、インテルベースのLinuxサーバーに市場を奪われているからだ。しかし、IBM「pSeries」は、台数、金額ともに直近は2ケタの伸びを示す。これはIBMの大・中型UNIX、Linux兼用のPowerチップサーバーが、サン、HPのリプレースに成功していることによる。

 IBMのブレード戦略の狙いはどうやら、1台のシャーシに、ウィンドウズ、Linux、UNIXの3OSサーバーを混在収納することのようだ。これによって、世界SMB(中堅・小企業)の多くのコンソリデーション需要に対応できる。エンタープライズでのサーバーコンソリデーションは、数百、数千台の仮想サーバーに1台の大型サーバーを分割できるメインフレームや大型UNIXサーバーで行われている。 しかし、仮想化技術は難解で、ITスタッフの脆弱なSMBの最適ソリューションとはなりにくい。それよりも、従来のサーバーOSをそのまま搭載し、台数もほとんど従来と同じのブレードによるコンソリデーションには、顧客エンドユーザーの反発も小さい。

 IBMのブレードサーバー商品は、第1ステップとしてインテルのウィンドウズ/Linuxサーバーが、第2ステップとしてPowerのUNIX/Linuxサーバーが出現する。そして第3ステップが、インテル、Powerチップと、ウィンドウズ、Linux、UNIXのOS混在のブレード出現で当面のシナリオが完結する。これでIBMは、「ブレードアーキテクチャ世界標準獲得と、サーバーのTCO(所有総コスト)削減が実現する」と説明する。それと同時に、ブレードは構成や性能変更も極めて容易なため、IBMの唱える変化に柔軟に対応する「オンデマンドコンピューティング」の必需品となることも想定される。(中野英嗣●文)

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