テイクオフe-Japan戦略II IT実感社会への道標
<テイクオフe-Japan戦略II>15.「e!プロジェクト」
2003/11/10 16:18
週刊BCN 2003年11月10日vol.1014掲載
六本木ヒルズで実証実験
R-クリックは、0.7秒に1回、電波を自動発信するほか、会員がクリックボタン(意思表示ボタン)を押した時にも電波を発信する。六本木ヒルズの12か所に、無線アンテナを設置したスポットが配置されており、R-クリックをもった会員が六本木ヒルズに入っていくと、自動発信電波によって誰が六本木ヒルズを訪れたかを検知する仕組みだ。森ビルでは、電子マネー機能の付いたICカード「コミュニティパスポート」の無償配布を積極的に進めている。名前、住所、年齢、性別、六本木ヒルズ内で働いている人かどうかなどの属性情報やパソコン、携帯電話のメールアドレスなどが登録されており、R-クリックのモニターもコミュニティパスポートの登録メンバーが対象。実験では六本木ヒルズで働いているかどうかと性別で属性を4つに分類、時間帯も午前、午後、夕方、夜の4つ分けて、属性と時間帯に応じた情報を提供する。R-クリックサービスは、3種類を用意。六本木ヒルズに配置された12か所のスポットのうち、地面に赤い目印が張られた10か所の近くで、R-クリックのボタンを押すと、メールが送信されてくる「ここだけクリック」。プラズマディスプレイの情報掲示板が設置されている2か所のスポットで、ディスプレイに表示された情報が欲しい時にR-クリックを押すとメモ代わりに情報を転送してくれる「みてとるクリック」。モニター会員が六本木ヒルズに来たことが検知されてR-クリックを押さなくても勝手にメールが配信されてくる「ぶらっとキャッチ」の3つである。
実際にサービスを体験してみて感じるのは、提供される情報の中身や運用方法などソフト面の重要性だ。携帯電話にR-クリックや情報ディスプレイなどを組み合わせたハードは技術的に問題なさそうだが、利用者にとって興味のない情報が多ければ利用しなくなるだろうし、集客などの効果が小さければショップや飲食店にとっても魅力がない。いかに利用者の興味を引く情報をタイムリーに提供でき、集客などの効果を発揮できるかがサービス成功の鍵を握っている。
森ビルでも、実験を通じてコンテンツの中身や情報提供の仕方によって利用者がどのような行動を取るかを検証したい考えだ。「ぶらっとキャッチ」では、R-クリックの自動発信電波を追跡することでモニター会員が歩いている方向を検知、その行き先方向にある店舗の情報を割引サービスなど特典付きで配信するが、従来の広告媒体と違うのは、メールを何通送付したら実際に何人がその店舗を訪ねたのかを正確に把握できる点。どんな内容のメールをどのタイミングで何通を配信すれば、何人ぐらい集客できるのか――がわかれば、店舗の混雑状況に応じてきめ細かく集客をコントロールすることも可能になるかもしれない。新しい広告媒体として注目を集めることになりそうだ。
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