視点

第2次IT革命の主役

2003/10/20 16:41

週刊BCN 2003年10月20日vol.1011掲載

 総務省とCIAJは9月16日、「ワイヤレスIT産業強化シンポジウム」を開催した。“産業強化”に視点をおいたユニークなシンポジウムだったこともあり、会場は大いに盛り上がり、片山虎之助大臣(当時)の基調講演も20分の予定が30分に延びる中身の濃いものとなった。しかもその講演テーマが「電波開放戦略」とあって、インパクトは大きかった。電波はもともと国が持っている貴重な資財で、有限だとされてきた。このため、個人の利用は限られた世界にとどまってきたが、これを総務省では「電波政策ビジョン」に基づき開放し、広帯域周波数の拡大、自由な電波利用環境の実現を目指すことにしている。

 つまり、従来の電波を割り当てる行政から、実際に使う側が電波の利用を考える行政へと転換していくことになる。電波が官から民へ移るわけで、産業側がどう利用するかを考え、超高速・超広帯域の技術革新に取り組めば、電波は有限から無限の資源になっていく。シンポジウムで片山大臣は、2005年にも情報家電専用の無線周波数帯を世界で初めて設定する方針を表明された。現在、無線を利用している分野が光ファイバーに置き換わると、周波数帯に余裕が出る。情報家電の周波数帯は5GHzが予定されているようだが、これこそ技術の組み合わせ次第で様々な利用が考えられ、無限の可能性を秘めている。

 私は、これからの第2次IT革命はワイヤレスが主役になると見ている。第1次の10年前はインターネット、パソコン、マルチメディアが主役だったが、米国企業の活躍を前に日本は敗れた。しかし、ワイヤレスが主役の第2次は、世界一のブロードバンド環境、モバイル先進国、IPv6の取り組みなど、日本にはビジネスの要素がすべて揃っている。今こそチャンスだ。ワイヤレスとブロードバンドが結びつくと、想像もつかない世界が来る。ワイヤレスは未知の世界がいっぱいあり、良い意味で電波開放が技術進歩を後押しすることになる。

 もちろん10年前と同様、米国の軍事を通じて開発された技術が日本に入ってくる。これを前提に日本の技術が負けないようにする必要がある。それには産官学の連係が何より大事となろう。また、今のメーカーはキャッシュフロー経営になっているが、もともと研究開発はストック経営がベース。米国には軍事機関や巨大な財団があるだけに、一層、産官学の連携が重要になってこよう。
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