大航海時代
<大航海時代>第22篇●新しき勇者たちへ 第102話 世界一の誇り
2003/10/13 16:18
週刊BCN 2003年10月13日vol.1010掲載
水野博之 大阪電気通信大学副理事長
大阪市の東に近接して東大阪市という街がある。ここは中小企業の町だ。約8000もの中小企業が集まる。いわば、おやっさんが旋盤の名手で、一家がこれを手伝っているといったのが多い。しかし、それぞれの企業は、それぞれ世界一、という誇りをもっている。1本のビスの精度ではどこにも負けないとか、バルブのややこしいのは俺のとこの仕事だ、というのがこの街の看板である。したがって、大阪近辺の大企業は何か思いついて試作品を作るときは、この地区を頼りにすることが多い。難しければ難しいだけ、おっさん達は腕によりをかけて張り切るのである。現在では、自分では工場をもたずに、製品の企画だけをして、その他もろもろのことはこの地区の人々に依存して飯を食らている人達もいる。かつてIP(インターネット・プロダクション)という話があって、インターネットを使って世界中の優秀な技術と労力を総合して商品をつくる、ということがいわれたことがあるが、ここでは、とうの昔からこのことが行われていたのである。
最近ここのおっさん達が集って、「宇宙衛星を飛ばそう」ということになった。オモチャではない本物の人工衛星である。よく見てみれば、この地区から世界中の衛星の部品がたくさん輸出されているのだ。これをかき集めれば、おれ達だって飛ばせるぜ、ということになったのである。こうなってくると、国もぼんやりしておられない。ことの大小を問わず、一発で東大阪衛星が成功しようものなら、大いに考えないといけないだろう。おっさんと長男が機械を操り、嫁はんと長女が経理を担当するような企業の力も、ここまでくると大変なことになる。こんな企業がいまの日本の根幹を支えているのだ。こんな国は世界中探してもまだない。(東大阪商工会議所にて)
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