中国ソフト産業のいま

<中国ソフト産業のいま>39.BPOは中国で開花するか?

2003/10/13 20:43

週刊BCN 2003年10月13日vol.1010掲載

 今回から中国へのアウトソーシングについて再び考えてみたい。システム開発・運用、果ては業務オペレーションの外注まで、本格化なアウトソーシング時代が来るのか。中国はその受け皿となるのか。最初の題材としてアクセンチュアを取り上げる。(坂口正憲)

 この連載でも過去紹介したが、同社は今春、中国・大連に大規模なアウトソーシング拠点「大連デリバリーセンター」を開設した。当初はスタッフ50人でスタートしたが、2005年末までに1000人以上に増やす。日本語でのサービス提供が可能で、日本企業に向けた戦略拠点だ。システム開発・運用を請け負うとともに、BPOサービスを提供する。

 BPOとは「ビジネス・プロセス・アウトソーシング」のことで、簡単に言えば会計など間接業務の外注である。業務システムの開発・運用とともに、業務処理そのものも外部に委託する。日本でアクセンチュアはコンサルティング会社のイメージが強いが、BPOサービス業者としても豊富な実績を持つ。欧米では10年以上前から、石油メジャーや米AT&Tなど大手企業200社以上にBPOを提供する。それも単に業務処理を請け負うのではなく、BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)コンサルティングによって業務を効率化。それにより捻出した利益を顧客とシェアするサービス形態である。

 ただ、欧米では好調なアクセンチュアのBPO事業も、日本市場では実績がまったくない。「日本企業の業務部門は強く、自分たちの“城”を全面的に明け渡したがらない」(同社)傾向が強い。大連デリバリーセンターは、「同じ業務量ならば日本に比べ最大60%コストを削減できる」というコストメリットを武器に、日本企業へBPOを浸透させるための足掛かりとなる。実際、同社自身が国内にあった業務部門をほとんど大連に移転させている。今のところ同社とBPO契約を結んだ日本企業はないようだが、「以前に比べて関心は高まっている」という。業務システム再構築により、日本企業は業務の効率化を目指してきたが、BPOの採用でそれをさらに押し進めるのか。1つの決断を迫られている。
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