OVER VIEW
<OVER VIEW>緩やかな回復基調にある米国IT市場 Chapter1
2003/10/06 16:18
週刊BCN 2003年10月06日vol.1009掲載
従来からのIT投資に対する厳しい反省
■緩やかな回復基調が感じられる世界市場
IDCは、低迷していた世界パソコン出荷台数も、03年には8%増と見込む。また、国内を含めて価格破壊が大きく、出荷金額が2ケタ落ち込みを続けた世界のサーバー市場も、03年4-6月期にはわずかながら0.2%増に転じた。同じ時期の国内サーバー市場は相変らず15%という2ケタ減だった。このような世界市場の動向も、有力ベンダーの決算に反映し始めた(Figure2)。

世界的に見ると、エンタープライズ市場ではIBMが独り勝ちの様相を強めている。一方ウィンテルではデルが完全な独り勝ち体制を固めた。IBMに次ぐ規模のHPの決算には、IBM程の強い回復は感じられない。従って、今回の市場回復では、回復潮流に乗った数少いベンダーと、不況に取り残されたベンダーの明暗に分れている。
しかし、この緩やかな回復は、従来的IT需要が回復したことによるものでないことに留意すべきだ。ハイテク市場のIT分野では、環境に即応した「オンデマンド経営」を支える新しいITインフラの需要、企業のeビジネスへの転換を主導するトランスフォーメーションコンサルティングや戦略的アウトソーシング、あるいはシステム複雑性を解消する自律型技術、そして複数のサーバーやストレージを1台のように管理する仮想化技術を実装した「管理し易いIT」の需要が回復を牽引していると考えられる。
また、ユビキタス分野では、DVDレコーダ、ネット対応の薄型TV、デジタルカメラ、カメラ付携帯電話など新しい需要が市場牽引役である。こうしてこれからのハイテク市場ではオンデマンドITとユビキタスITの2つが主役になりそうだ。
■ユーザー、ベンダー双方が現行ITの反省を
世界的IT不況時には、経済低迷もあって各企業にTCO削減の圧力が強まり、このムードがIT投資を減らしたという背景がある。この投資削減下でユーザーとベンダーの双方で現行ITが抱える問題点が浮上した。ユーザー側ではITの複雑性、各企業内にばらばらに入り乱れて構築されてしまった多数の部門最適化システムが問題視されるようになり、「ITがビジネスに真に役立っているのか」という疑問がユーザーで語られるようになった。

この双方の抱える問題を解決するため、ベンダーは自律型、仮想化技術を実装するシステム、あるいは新しい分散コンピューティングであるグリッドコンピューティング、ウェブサービス技術開発を推進した(Figure3)。
そしてこれらの新技術をもつITがユーザーに管理コストの削減、新機能の最速実装をもたらすことをベンダーは訴え始めた。さらに市場環境に敏速に対応できるオンデマンド経営を実現する新しいITシステムや、使った分だけ料金を支払う従量課金のハード、ソフト、ITサービスが市場に誕生し始めた。

■システムのあるべき姿を問う、新しい視点からのIT投資
米国IT業界およびユーザーでは、「エンタープライズアーキテクチャ(EA)」、「オンデマンドコンピューティング」という2つの概念と、「IT Doesn't Matter(ITはもはや重要でない)」という論文がこれからのITシステム構築に重要な指針を与えるものとして注目されている(Figure4)。

経営者に対しては、「自社のIT利用率が低いことを心配するより、ITベンダーの口車に乗って、過剰なIT投資を絶対しないことに最大限の経営努力を払うべきである」と警告した。一方、オンデマンドコンピューティングはIBMや富士通など世界有力ベンダーが一斉に提唱した「市場環境に敏捷に対応してビジネス戦略を転換するオンデマンド経営」を支える新しい考え方のITソリューションである。さらに、EAは既に多くの米大企業やワシントン政府機関が採用している企業ITシステム構築のためのフレームワークだ(Figure6)。

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