視点
産学官連携とマーケティング
2003/09/29 16:41
週刊BCN 2003年09月29日vol.1008掲載
産学官連携によって優れた製品が開発されたとしても、それが市場で本当に売れるかどうかが大きな問題である。ベンチャー企業は一般に販売戦略や営業力が弱いこともあって、苦戦を強いられることも多いが、その製品にもともと市場性がないこともある。なぜそのようなことが起こるのかといえば、それは製品開発の前に十分なマーケティングをしなかったからである。日本ではマーケティングに対する意識と人材が不足していると思われる。大学の経済や経営関係の学部に、情報技術を駆使した近代的なマーケティングの教員がどれくらいいるだろうか。マーケティング学科などはほとんどないのが現状である。
国立シンガポール大学には20名以上の教員を擁する規模の大きいマーケティング学科がある。教員はすべてレベルの高いマーケティングの専門家で、アジアのマーケティングを中心に研究をしている。学部や大学院の授業はすべてマーケティングに直接関係するものばかりである。日本でもこれからはマーケティングの重要性を認識し、人材の育成と研究にもっと力をいれる必要があろう。
いまの産学官連携の考え方は、すでにある多くの研究成果の中から実用化できそうなものを探し出して製品化しようというものである。それ自体難しいのに、製品化の際にマーケティングをほとんどやらないのだから、ビジネスとして成功させるのはなおさら難しい。今後は、あらかじめマーケティングによって市場ニーズを的確に把握し、そこに資金を投入して、大学と企業が共同で製品開発をするというような、マーケティング先行型の産学官連携を進めるべきである。
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