シフトアップIT利活用 経済産業省の次なるシナリオ

<シフトアップIT利活用 経済産業省の次なるシナリオ>第4回 電子タグの普及へ基盤整備進む

2003/09/22 16:18

週刊BCN 2003年09月22日vol.1007掲載

 経済産業省がITの利活用で、いま最も力を入れているテーマの1つが「電子タグ」である。2003年度と04年度の2年間で、電子タグの利用基盤を整え、一気に普及段階へ引き上げようという作戦だ。

 その最大の関門が電子タグの低価格化である。価格が高いから普及しないのか、普及しないから価格が高いのか――。ニワトリとタマゴの関係を打開するのに、経産省はかなり思い切った戦略を打ち出した。

「2年で1個あたり5円を実現することをコミットメントしている」――。新原浩朗・商務情報政策局情報経済課長は、日産自動車のゴーン社長さながらのコミットメントを公表。経産省として、あらゆる施策を総動員して5円を実現するから、それを前提にして電子タグをどんどん利用してほしい、という強烈なメッセージだ。

 当初はコストが高いと言われてきた電子タグも、最近は1個あたり数百円から数十円にまで低下してきている。「アンテナ部分を、低コスト化が可能な印刷技術で作れるようにする技術研究も進める。チップの低コスト実装についての技術開発も進める。これに普及拡大による量産効果も加われば1個あたり5円は十分に可能だ」(新原課長)という読みである。

 しかし、価格をコミットメントしただけでは利用拡大は進まない。電子タグをどのように使ったらビジネスに役立つのか――。アプリケーションとコミットメントの両輪が揃って、ユーザー業界も利活用に向けて具体的な行動を起こすトリガーを引くことになる。

 新原課長は自らの役割を電子タグの“伝道師”と位置づけているようだ。講演などを通じてアプリケーション事例の紹介活動を積極的に行っており、そのために実際に使われている電子タグのサンプルを数多く集めて、現物を相手に見せながら、その有用性を説いている。

 先月には小泉純一郎首相に、電子タグを皿に埋め込んで利用している回転ずし店に訪れてもらうというパフォーマンスも演出。「いま、電子タグのアプリケーションに関する情報が最も集まっているのは経産省」との言葉通りに、来年度概算要求では電子タグ関連で新規に35億円を盛り込んで、10以上のアプリケーション実証実験を実施したい考えだ。

 電子タグ利活用のポイントは、商品などのトレーサビリティ(追跡管理)とSCM(サプライチェーンマネジメント)を進化させる点。既存のバーコードの上位互換として利用できる環境を整えることも不可欠だ。追跡管理のベースとなる商品コード体系の標準化は、経産省が中心となって標準化案を策定済みで、欧米諸国も賛同。来春にはISO(国際標準化機構)で国際規格となる見通しだ。

 異なるベンダー間の電子タグが相互に読める技術の標準化案も作成中で、来年中のISO化を目指している。低価格化のコミットメントを達成するための技術開発プロジェクト「日の丸タグコンソーシアム」も近く発足させる予定。電子タグの普及に向けた基盤整備は急ピッチで進み出している。(ジャーナリスト・千葉利宏)
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